遠隔でガイドを操作!フェロー諸島による“リモートツアー”に注目が集まる
コロナ禍においては多くの産業が影響を被っているが、世界各地を自由に行き来出来なくなってしまった今、最もダメージを受けているのは旅行業界ではないだろうか。
そのような現状を打開し、新たな旅行の形を模索しようとフェロー諸島が開始した“リモートツーリズム”が注目を集めている。
コロナ禍で島の魅力伝える方法として考案
“リモートツーリズム”を開始し注目を集めるフェロー諸島は、スコットランドのシェトランド諸島とノルウェーの西海岸、そしてアイスランドの中間に位置するデンマーク自治領の小さな諸島だ。
同諸島では新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、旅行者がウイルスを持ち込むことのないよう、当初観光客に対し島への旅行を控えるよう要求していたという。
しかしそれでは島の魅力を伝えることは出来なくなってしまう。
そこで考案されたのが、観光客が“地元住民の目を通したヴァーチャル観光客”となり、“地元住民の動きをリアルタイムでコントロール”するというリモートツーリズムの形だった。
そしてそのアイデアの発案からわずか数週間後、フェロー諸島では世界初となるオンライン上のコントローラーを用いた“リモートツーリズム・ツール”が誕生することとなったという。
実際のリモートツーリズムとは一体…
それでは実際にこれを利用しフェロー諸島のリモートツアーを行うというのは、どのようなものなのだろうか。
このツアーでは毎日、フェロー諸島の現地時間の14時と17時の2回にわたり、カメラが取り付けられたヘルメットを装着した地元住民によるガイドがオンライン上に登場。
ツアーサイトにスマートフォンやパソコンからログインしている匿名の“ヴァーチャル観光客”が、2分間にわたりオンライン上の現地ガイドを遠隔でコントロール出来る、という仕組みになっているという。
またツアーは日によって諸島内の異なる地点で行われると共に、ガイドの移動手段も徒歩から船、さらには馬など様々であるとのことだ。
これを早速利用したという英国の大手新聞紙「The Guardian」の記者は、この実際の使用感についてこう綴っている。
“携帯電話のボタンを押すとカメラが左に振れ、息切れする声により、我々がフェロー諸島の村Bøurの沖の海峡に位置する尖った岩の一部分、Tíndholmurを見ていると説明される。
私には右か左、上か下に行くボタンを押すことが出来る。やや意地の悪いことに、スクリーン上のコントロールではガイドを“走らせる”ことや、奇妙なことにその場で“ジャンプ”させることも出来てしまう”
ちなみに筆者もこのリモートツアーに参加してみたいと思ったのだが、サイトを見てみると次のツアー開催日時は2日間以上先であることを示す表示があったため、今回は断念した。
“最も憧れの島”に選出も、景観保護との両立に苦慮
フェロー諸島というと日本では聞きなれない人も多いかもしれないが、同諸島は2007年「ナショナルジオグラフィックトラベラー」誌により“世界で最も憧れの島”に選出され、近年人気が高まってきていた。
しかしその反面、フェロー諸島では観光客の呼び込みと美しい自然景観の保護の両立に悩まされてきた。
昨年には“メンテナンス”のため、数日間にわたり島を閉鎖。作業を手伝うことの意欲のある100人の外国人ボランティアのみ受け入れる、ということも行っていたという。
そのような中、地元住民をガイドとして活用してリモートツアーを行うのは、景観保護の観点においても理にかなっていると言えそうだ。
オンライン上の現地ガイドを遠隔操作するという世界初の試みで注目を集めるフェロー諸島。
今は実際に訪れることが出来ないのが残念ではあるが、自粛生活の合間に同島をリモートツアーで訪れてみてはいかがだろうか。(了)
出典:The Guardian:Forget drones, let a remote control person guide you round the Faroe Islands (4/15)
出典:CNN:Now you can remote control people in the Faroe Islands(4/23)
出典:株式会社ヴァイキング:フェロー諸島旅ガイド