スタンフォード大研究者ら、患者の死期を予測できるAIアルゴリズムを開発
スタンフォード大学の研究チームにより、死期が迫った患者の寿命を予測できるAIアルゴリズムが開発されたとして、話題を呼んでいる。
死に至る病を患う患者の死期を予測
人工知能(AI)は既に様々な分野において革新的な変化をもたらしているが、その中でも大きな影響を与えているとされるのが医療の分野だ。
研究者らは季節ごとの風邪の流行予測や、難病の診断等の医療現場においては、これまでにも既にAIを活用してきた。しかし昨今スタンフォード大学の研究チームによって開発されたAIアルゴリズムはさらにその先をゆくものだ。
このAIアルゴリズムによっては、深刻な病により病院に収容されている患者が、いつ死亡する可能性が高いかということを予測することができるという。
AIは“ディープ・ラーニング”を応用
このAIアルゴリズムは、大量のデータを学習することにより、事前の定義を与えられることなくして困難なタスクの解決や予測を行うことが可能な技術である“ディープ・ラーニング”を応用したもの。
開発にあたってスタンフォード大学の研究チームは、同大学の病院で過去に亡くなり、様々な病気や病歴、重症度など、異なる条件を有する16万人もの患者の医療記録をAIにより解析。
さらにその後4万人もの他の患者の記録によってテストを行うと、AIは患者が3ヵ月から1年の間に死亡したか、十中八九当てることができたという。
研究者が見据えるのは緩和医療との連携
研究者らがこのAIアルゴリズムの開発によって見据えるのは、緩和医療との連携だ。
患者の苦痛を和らげる緩和医療の現場では、死を前にした患者が質の高い“生”を全うすると共に、患者の最後の願いをいかにして叶えるかというのが重要視される。
一方患者の処置にあたる医師の中には、患者の状態の判断を見誤り緩和医療が必要ないと考え、その存在に言及しない者もいるという。
スタンフォード大学の研究チームでAI開発に携わったKenneth Jung氏によると、調査では緩和医療が必要な患者のうち、実際処置を受けることができた人はわずか8%にも満たないという。
しかし適切な緩和医療が行われない中での治療には危うさが潜む。患者の容体が急変した際、たった数週間寿命を延ばすために積極的な治療が行われることとなれば、患者が最期の時を家族と共に過ごせなくなってしまう可能性がある。
スタンフォード大学によると、米国では8割もの人が自宅で最後を迎えたいとする一方、6割が救急病院で息を引き取っているという。
Why patient safety matters: You have a 1 in 25 chance of leaving the hospital with a new infection https://t.co/uFu7zRqssN @CDCgov pic.twitter.com/AlexBdOUmF
— The Leapfrog Group (@LeapfrogGroup) February 12, 2018
今回スタンフォード大学によって開発されたAIアルゴリズムは、入院患者が3カ月から1年以内に死亡する場合、90%の正確さで予測することが可能だ。
テキサス大学で緩和医療に務めるDavid Hui氏は、AIを用いずに行われてきたこれまでの方法では、患者の死期は70~80%での確立でしか予測することができなかったと指摘。
近い将来には、全ての入院患者の記録がこのAIアルゴリズムによって検査され、緩和医療チームに死期が迫った患者を伝える、といったことが行われる可能性もあり、それにより病に苦しむ患者が最期の時を最も快適、かつ自らの意思に近いかたちで過ごすことができるようになる。
AIは医師の判断に替わるものではない
テキサス大学で緩和医療に務めるDavid Hui氏は、より多くの患者と病院での試験が求められるとも指摘しつつも、このAIアルゴリズムは患者により良い緩和医療を施すのを助ける可能性があるとして期待をかける。
研究によると、医師は患者の健康について楽観的で不正確な見通しを立てることが頻繁にあり、その結果緩和医療についても患者に伝えないことが多くなっているという。
それだけではない。Jung氏によると、医師の中には治療に専念するあまり、緩和医療について患者本人に伝えることまで思いが至らない者もいるという。
さらにはオーストラリアのクイーンズランド大学で緩和医療に携わるBill Lukin氏は、緩和医療への言及は患者に死を想起させることもあり、患者本人に病気と闘うことを諦めて欲しくないとの思いから言及しない医師も存在するという。
一方、Jung氏は「これは医師の判断に替わるものではない。さらなる処置を提供するものだ」と言う。
末期患者の死期の予測を可能とさせる今回のAIアルゴリズム。これが実際に医療の現場に導入され、患者の最後の時がより良いものになる日がくることを望むばかりだ。(了)
出典元:NBCNews.com:AI can predict when we’ll die — here’s why that’s a good thing(2/3)
出典元:Tech Times:New AI System That Predicts Death Of Patients Can Improve End-Of-Life Care(1/21)