北朝鮮で核開発を担当していた科学者、脱北後に拘束され自殺か
北朝鮮で核開発に携わっていたとみられる科学者の男性が、自殺したとして米メディアが報じている。
核融合分野を担当していた元幹部
アメリカのラジオ放送「自由アジア放送(RFA)」によれば、自殺した科学者は平壌市恩情区域科学2洞にある国家科学院物理研究所で、核融合分野を担当していた室長クラスの幹部だという。
この科学者は脱北し、今年11月4日に中国・瀋陽で逮捕され、11月17日に新義州へ強制送還されたそうだ。
またRFAは「新義州の保衛部に連行され、独房に身柄を拘束されてから2、3時間の間に自殺した。取り調べを受ける前だったので、脱北の動機や経路などは分かっていない状態」と説明している。
最高の待遇を受けるも放射能に曝される
核開発に携わっている科学者は、北朝鮮では最高の待遇を受けていると言われているが、なぜ脱北しなければならないのか?
RFAによれば自殺した科学者は、自分が進めている研究について不安を訴え、精神不安の症状を示し、一時休職していたという。
さらに旅行証明書もなく朝中国境付近の親類の家へ行き、司法機関が自分を追っているという事実を知った後、中国へ渡ったと考えられているそうだ。
ある消息筋は「北朝鮮当局は原子物理学者らにマンション、食料、肉、レストラン利用権の提供などさまざまな特別待遇を行っているが、科学者らは不十分な安全設備を頼りに、放射能にさらされながら原子物理の実験を行っている」と語っている。
このような情報は十数年前にも伝えられているが、現在も同様の状況が続いているとは驚かざるを得ない。
金正恩氏と科学者との関係は?
一方で、金正恩氏は技術系出身の官僚と密接な関係を築いており、そのことが核開発のスピードアップにつながったともみられている。
ロイターによれば、9月3日の核実験の直前に朝鮮中央通信が配信した写真には、水爆とみられる物体を視察する金氏の傍らに、2人の科学者が写っていたという。
その2人の科学者とは元寧辺原子力研究所所長のリ・ホンソプ氏と、党中央委副部長のホン・スンム氏。いずれも海外でブラックリストに載っている人物とされている。
2人は昨年1月に行われた4回目の核実験後に金氏からメダルを授与され、2カ月後には、大陸間弾道ミサイルへの搭載が可能とされる弾頭の模型を視察する金氏に随行していたそうだ。
専門家によれば、ホン氏は党幹部として核開発を主導し、リ氏は実務レベルで水爆などの核実験を担当している可能性があるという。
父親の金正日氏や祖父の金日成氏が兵器開発を小規模な専門家グループや中間管理職に任せることを好んだのに対して、金正恩氏は科学者と個人的なつながりを深めており、兵器の試験や現場の視察に技術系出資の官僚が随行する場面が多いそうだ。
そして部下と直接現場に赴く金氏のスタイルによって、核やミサイルの開発のペースが上がり、科学者は金氏と個人的な関係を強めていると専門家はみている。(了)
出典元:RFA:North Korean Nuclear Scientist Commits Suicide on Forced Return From China(2017/12/28)
出典元:Reuters:焦点:北朝鮮の核開発、背後にブラックリスト科学者2人の存在(9/5)