ベランダからの距離は僅か50センチ!エジプトで建設中の危険すぎる高速道路が物議に
エジプトで建設中の高速道路が、その目の前にそびえる集合住宅から“あまりに近すぎる”として物議を醸している。
建設中の道路の写真がSNS上で拡散され物議に
エジプトで物議を醸しているのは、同国の首都カイロからほど近い地点に位置し、ピラミッドで有名な都市、ギザのアルハラム地区。そこにある現在建設中の高速道路「Teraet Al-Zomor Bridge」だ。
その建設の目的はギザの南北を結び付けることで、完成すれば一日に75万台もの車両が行き来すると見積もられている。
そんな高速道路の存在がにわかに知られるようになったのは、今月半ばのこと。
建設中の道路のコンクリート部が目前にそびえる集合住宅に接しているかのように見える写真がソーシャルメディア上で拡散され、大きな注目を集めるようになった。
A new flyover under construction in Giza in Cairo. Oppressive infrastructure pic.twitter.com/cUTS2kaR43
— Christian Henderson (@CjvHenderson) May 12, 2020
ベランダからの距離僅か50センチ!惨状を多くの住人が訴える
しかし実際に集合住宅と建設中の高速道路との距離は、どれほど近いのだろうか。
これについて、集合住宅に暮らす多くの住人がその惨状を訴える。
12階建ての集合住宅の4階で、父親と共に暮らす銀行員のOsama Fayezさん(44)も、そんな中の一人。
Fayezさんによると、約1年前に建設が始まった際には、高速道路は集合住宅から4~5メートル離れた地点になるとされていたという。
ところがその後「彼らはコンクリートを敷き始め、それは見てのとおり40~50センチメートル先にあるんです」といい、今ではベランダから手を伸ばせば高速道路に手が届いてしまうという。
Fayezさんは「私はこのアパートに人生の全ての努力を注いできたんです」と肩を落とす。
会計士のVivian Yousefさん(36)も、目の前に位置する道路の存在が景観を大きく損ねていると訴えている。
彼女いわく高速道路の建設前は自身の2人の子供がバスを降りる姿をベランダから見ることが出来たというが、「今通りは全く見えません」という。
またとある住人は冗談交じりで「通り過ぎる車に対し、我々はもしかしたらベランダでのお茶に誘うことが出来るかもしれません」などとしている。
エジプト政府側も原因究明のため調査
一方、この高速道路を巡ってはエジプト政府も反応している。
同国の運輸大臣Kamel Abd El-Hady Al-Wazir氏は、高速道路の建設について「我々は行政地区全体の利益をたった1棟や2棟、10棟のアパートのために犠牲にすることは出来ない」とコメント。
このような現状となった背景については委員会において原因究明に向けた調査が行われているとしつつも、「委員会の判断は近日中に明らかになるが、道路はこのような形で建設されなければならず、小さくは出来ない」とした。
Al-Wazir氏によると、高速道路はギザ地区のインフラとして極めて重要であり、既に数年前から建設中の鉄道駅と連結する構想になっているという。
集合住宅の文字通り目と鼻の先に建設が進む高速道路。
仮にこのまま建設が終了し利用が始まったとしても、事故が起きれば大惨事となりかねない危険な高速道路の存在を誰が喜んで受け入れようというのだろうか。
エジプト政府にはこの件に関し、慎重な判断を下してもらいたいところだ。(了)
出典:Reuters:A bridge too close: Cairo flyover angers residents(5/19)
出典:FRANCE 24:Cairo flyover too close for comfort for apartment dwellers(5/14)
出典:Ahram Online:Parliamentary committee to investigate controversial Giza flyover Tuesday(5/18)