中国政府が国外にいるウイグル人まで本国に強制送還、その手口とは?
中国政府が、さまざまな手段を使って、国外にいるウイグル人を本国に強制送還させていたとする報告書が、国際機関に提出された。
法的な問題を作り上げ、強制送還させる
この報告書を作成したのは「東トルキスタン亡命政府(自称)」と「東トルキスタン民族覚醒運動」のメンバーだ。(※東トルキスタンとは現在の新疆ウイグル自治区一帯を指す)
彼らは11月11日、この報告書(準備稿)を国際刑事裁判所(ICC)に提出した。
その報告書には、タジキスタンからウイグル人を強制送還させるために、中国当局に協力するよう圧力をかけられたり、強制されたりしたウイグル人の目撃者の証言が含まれているという。
そして中国政府のエージェンが海外にいるウイグル人に対し、中国政府に協力して情報提供者になるよう強要したり、あえてビザや法的な問題を作り上げて逮捕させ、強制的に中国本土へ送還させたりしてきたことが書かれているそうだ。
このメンバーの主任弁護士であるRodney Dixon QC氏は、次のように述べている。
「(中国の政府関係者が)どのようにしてタジキスタンに入り、ウイグル人を拘束し、逮捕し、国外に追放することに戦略を集中させたかについて、それらは直接国際刑事裁判所に証拠を与えることができるのです。これは、タジキスタン国内で中国の職員がどのように活動しているかについて、ICCも取材可能な目撃者が直接証言したものなのです」
報告書の提出は今回で3回目
実は、このような報告書の提出は今回で3回目。「東トルキスタン亡命政府」などのメンバーは国際刑事裁判所に対して、中国政府による、ウイグル人に対する人道に反する罪や虐殺を調べるよう求めてきた。
しかし前回提出された資料には、タジキスタンでの強制送還に関する記述が含まれていたが、ICCは、申し立てられた犯罪のほとんどが中国国内で中国人によって行われたと思われると判断。
また中国が加盟国ではなく管轄外であるため、申し立てを却下したという。そしてさらなる証拠の提出を求めたそうだ。
事実に基づく証拠を提出
今回の報告書を提出したメンバーによれば、もう1人の目撃者は、2016年後半からキルギスで行われている中国政府の戦略について、事実に基づく決定的な証拠を提供しているという。
実際、キルギスにいたウイグル人が、中国にいる親戚から「中国へ帰ってきてくれ」と懇願する電話を受け取ったり、地元警察が中国領事館の要請に協力してウイグル人を国境まで連れて行き、中国の捜査官に引き渡し、強制送還させられたりした事例もあるそうだ。
主任弁護士のDixon氏も、「これは、ICCが入手した非常に強力で説得力のある証拠です。机上の空論ではありません。彼ら(ICC)はこれを調査することができるのです」と述べている。
このような強制送還は以前から起きており、BBCではサウジアラビアで拘束されたウイグル人についても報道しており、トルコに住んでいるウイグル人も恐怖を感じていると欧米のメディアに話している。
また中央アジアやトルコでの聞き取り調査からの新しい証拠によれば、タジキスタンでは85%以上、キルギスでは87%ものウイグル人が強制送還により減少したことが明らかになったという。(了)
出典元:The Guardian:Chinese agents operating abroad to get Uyghurs deported, ICC told(11/11)