【チリ】ピノチェト政権下で生き別れた母子、42年ぶりに涙の再会
南米のチリで、以前生き別れた母と息子が、42年ぶりに再会を果たした。
42年前に無理やり引き離される
再会を果たしたのは、母親のマリア・アンジェリカ・ゴンサレスさんと、息子のジミー・リッパート・タイデンさん(42)だ。
先日、チリの町、バルディビアにある母親のマリアさんの自宅に、息子のジミーさんが訪れ、お互いに涙で抱擁を交わしたという。
2人はピノチェト元大統領の軍事政権下で無理やり引き離され、42年間も離れ離れに暮らしてきたそうだ。
Forty-two years ago, hospital workers took Maria Angelica Gonzalez’ son from her arms right after birth and later told her he had died.
More than four decades later, they’ve been reunited. https://t.co/ndsnW7Kd9Y pic.twitter.com/Ozvun5ynYE
— ABC News (@ABC) August 28, 2023
病院から赤ん坊が死んだと告げられる
42年前、マリアさんはジミーさんの出産直後に、病院職員から退院するよう迫られ、自分の子供を腕から引き離されたという。
その後、マリアさんが赤ちゃんを迎えに病院へ戻ると、病院職員から赤ん坊は死亡し、遺体は処分されたと告げられたそうだ。
しかし実は、この時ジミーさんは死んでおらず、その後人身売買の組織により、養子縁組に出されたという。
このような行為はピノチェト軍事政権下で横行し、多くの赤ん坊たちが貧しい家庭、貧しい母親たちから盗まれてきたと言われている。
今回、ジミーさんは、チリの非営利団体「Nos Buscamos」の助けを借りて、生みの親と再会を果たすことができた。
17年間独裁者として君臨
1973年9月11日、共産主義を掲げたチリのサルバドール・アジェンデ大統領を打倒するため、軍によるクーデターが勃発。その後、陸軍のアウグスト・ピノチェト総司令官が権力を掌握し、17年間独裁者として君臨し続けたという。
ピノチェト氏が起こしたクーデターは、アメリカのCIAも関与していたと言われ、その後独裁政権下では、少なくとも3095人が殺害され、さらに数万人が政治的理由で拷問を受け、投獄されたと言われている。
そしてピノチェト政権下では、1970年代から1980年代にかけて、チリの貧しい家庭から何万人もの赤ん坊が連れ去られたと推定されているという。
今年の4月から母親を探し始める
アメリカ人の家族に引き取られ、今はバージニア州で刑事弁護人として働いているジミーさんは、今年の4月から母親を探し始めたという。
そして「Nos Buscamos」は、ジミーさんがチリの首都・サンティアゴの病院で未熟児として生まれ、保育器に入れられたことを突き止めたそうだ。
そもそもジミーさんの養子縁組の書類には、生きている身寄りがいないと書かれていたが、「Nos Buscamos」の調査の結果、彼には母親がいて、4人の兄弟と姉妹がいることが明らかにされた。
そしてDNA検査も行われ、ジミーさんが100%チリ人だと判明し、彼の従兄弟とも一致。今回、生みの母親であるマリアさんと再会を果たした。
「Nos Buscamos」は過去9年間で、養子縁組された人々と生みの親との再会を、450件以上実現させてきたという。(了)
出典元:ABC News:Son stolen at birth hugs Chilean mother for first time in 42 years(8/28)