イラク軍がモスル西部で州庁舎などを奪還、多くの市民も避難を余儀なくされる
イラクにおいて先月19日から始められた、モスル西部奪還作戦。3月5日にイラク軍は攻勢を強め、ISISが退却を余儀なくされていることが明らかとなった。
●州庁舎や中央銀行、博物館を奪還
AFPによればイラク軍は7日、ISISの支配下にあったモスルの考古学博物館や、中央銀行の建物などを奪還したという。
この考古学博物館は、以前ISの戦闘員らが貴重な遺物を破壊する様子を撮影した場所とされ、中央銀行からは約1000万ドル(約11億円)が奪われ、資金源にされたと言われている。
またイラク軍は同日、モスル西部の州庁舎や、チグリス川にかかる橋の橋頭堡を奪還。今回で2つ目の橋を支配下に置いたとされている。
●まだ75万人がモスルに残されている
しかし激しい戦闘によって、多くの市民も困難な状況に追い込まれている。
Aljazeeraによれば、イラク政府は戦闘によって逃れてきた人が約6万5000人(別のデータもある)に上ると発表したという。
またモスル西部ではISISの統治下で、まだ75万人が取り残されている模様で、戦場と化した町では多くの人々が犠牲になるなど、厳しい状況に直面しているそうだ。
●爆弾がないことを証明するため服を脱ぐ
Reutersは、そんな激しい戦闘から逃れようとする父と娘の姿を捉えている。その記事によれば、娘を腕に抱いた父親は恐怖の叫びを上げながら、がれきが転がる通りを逃げてきたという。
フェイスブックには、父親と娘は生き延びたが、彼の妻や他の息子や娘、そして両親も皆死んだ、と書かれている。
避難してきた人々は飛び交う銃弾を避けながら、ある者はゴムサンダルで、ある者は裸足でイラク軍のいる場所まで走ってきたそうだ。
しかしイラクの兵隊に近づいた男性らは、自爆用の爆弾を体に巻いていないことを証明するためにシャツをまくり上げ、時には服をほとんど脱がなければならない。
実際、ISISが住民らに紛れて自爆攻撃を行うのは通常の作戦となっており、そのためイラク軍の兵士らは、走ってくる人々に対し、まず空に向けて銃を撃ち、速度を落とすよう命令しているという。
●化学兵器による攻撃を受けた人も
一方逃げ延びてきた人に対し、イラク政府は食料や避難場所を提供しており、3月6日時点で難民キャンプにはさらに10万人に対応できる余力があると発表している。
だが避難してきた人々の中にはケガをした人も多く、赤十字国際委員会によればモスルで負傷した人のうち12人は、化学兵器による攻撃にさらされた可能性があるという。(了)
出展元:Reuters:Terror on the Mosul front line(3/6)
出展元:AFP:イラク軍、モスルで州庁舎を奪還 ISから市解放へ攻勢(3/8)
出展元:AFP:ISが破壊したモスルの博物館、イラク治安部隊が奪還(3/7)
出展元:ALJAZEERA:Forces claim gains in battle for Mosul’s Old City(3/8)