米で進められている新型コロナ・ワクチンの臨床試験、中間報告が発表される
現在、アメリカで治験が進められている新型コロナ・ワクチン。その効果などについての中間報告が、7月14日に医学誌「New England Journal of Medicine」において発表された。
スパイク・タンパク質を中和する抗体を導入
治験が進められているワクチン「mRNA-1273」は、米国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)とバイオベンチャーのモデルナ社、ケンブリッジ大学、マサチューセッツ大学の研究者らにより、共同開発されたもの。
従来のワクチンは鶏卵培養などで作られ、ウイルスに含まれるタンパク質などの物質に対して免疫反応が生じるよう、病原体に対する抗体が体内に作られる仕組みになっている。
これに対して、mRNAワクチンは、そのタンパク質を作り出す遺伝物質であるmRNA(メッセンジャーRNA)を人間にあらかじめ投与する。mRNAは病原体の設計図であり、これから病原体の一部が体内で作られ免疫反応が生じるという。
今回の「mRNA-1273」は、新型コロナウイルスが人間の細胞に侵入しようとする際に使う、スパイク・タンパク質を中和させる抗体を導入するようデザインされている。
そして現在、人間に投与するフェーズ1の臨床試験が行われており、今回の中間報告では健全な大人において、中和化する抗体の活動が促されていることが確認されたそうだ。
深刻な有害事象は確認されていないが…
これらの治験はシアトルにあるKaiser Permanente Washington保健調査研究所や、アトランタにあるEmory大学において、18歳から55歳までの被験者、45人に対して行われたという。
治験では15人ずつ3つのグループに分かれ、2回の筋肉内投与が行われたそうだ。さらに28日後には、この臨床試験用のワクチンをそれぞれが25mcg(マイクログラム)、100mcg、250mcg投与されたという。
45人の被験者のうち、42人が両方の注射を受けたが、安全性に関しては深刻な有害事象は報告されていない。
ただ被験者の半分以上が疲労や頭痛、寒気、注射部位における筋肉痛などの症状を訴えたそうだ。
全身性の有害事象は、2回目のワクチンを投与された人や、ワクチンの投与量が最も多かった人に多く見られたという。
今回のデータは以降の治験に引き継がれる
さまざまなワクチン投与量における副作用や免疫反応に関するデータは、治験のフェーズ2及びフェーズ3において、使用または使用が計画されているワクチンの投与量を決める際に引き継がれるようだ。
今回の中間報告には、2回目の注射後43日目までのワクチン誘発中和活性のレベルを測定したテスト結果が含まれている。
ワクチンを2回投与すると、COVID-19の疾患が確認された人から得られた回復期の血清の平均値を超える、高レベルの中和抗体活性が促進されたという。(了)
出典元:NIAID:Experimental COVID-19 Vaccine Safe, Generates Immune Response(7/14)