ウィルスが奪っていった、ひとりの年老いたパン屋のお話
新型コロナウィルスが、ミラノの片隅でパン屋を営むひとりの老人の命を奪った。
困っている人にパンを提供
新型コロナウィルスが最初に猛威を振るった3月。イタリア・ミラノのチャイナタウンにあるパン屋の店先に、「ご自由にお取りください。他の人のことも考えてくださいね」というメッセージと共に、パンやピザの入ったバスケットが置かれるようになった。
生活に困り、そのパンを手に取る人は少なくはなかった。時にはパンを手に入れるための行列ができるほどに。
店主のGianni Bernardinello氏は、「夜に残り物を出しているだけだよ」と話していたが、昼に焼き立てのパンが置かれていることもあったという。
コロナ禍でもパンを焼き続けた
76歳のBernardinello氏は、1989年に「人々が常に必要とするものを売りたい」と、パン屋“Berni”を開業。
新型コロナウィルスが猛威を振るい、娘たちが家から出ないで欲しいとお願いしても、「ドゥオーモの壁ができてから130年間、パンが焼かれなかった日はないんだ。1943年の空爆の日だってね」と言って、彼はパンを焼き続けた。
彼が店先に置くバスケットの周りは、砂糖やパスタ、トマトソースなど、人々が生活必需品を分け合う場になっていった。
パン屋がこの世を去った後
11月9日、新型コロナウィルスがBernardinello氏の命を奪った。
しかし、Berniの店先には、今日もパンが置かれている。「人々にはいつだってパンが必要だから」と、彼の娘であるSamuelaさんが焼いたパンが、以前と変わらず置かれている。(了)
参考:New York Times「Gianni Bernardinello, Baker Who Fed Neighbors Amid Pandemic, Dies at 76」(11/20)
参考:Facebook「VIVISARPI」