機内の救急患者をボールペンで救った大学生の機転に、賞賛が集まる
乗客の急病で緊急着陸するしかなくなった旅客機。だが、乗り合わせた大学生の機転で患者が救われ、緊急着陸が回避されるという、ちょっとしたドラマのような出来事があった。
インドの大学生
今年2月、インド工科大学で電気工学を専攻するKarttikeya Mangalamさんは、交換留学生として滞在していたスイスからインド・ニューデリーに戻るために、モスクワ発の乗り継ぎ便に乗っていた。
すると、2列後ろの席にいた乗客の体調が急に悪くなり、機内にちょっとした騒ぎが起こったそうだ。
1型糖尿病の高血糖緊急症
具合が悪くなったのはオランダ人の乗客、Thomasさん(30才)。彼は1型糖尿病で、インスリンポンプ(インスリンを持続的に注入する器具)を使っていたが、モスクワの手荷物検査場でそれを忘れて来てしまっていた。
Thomasさんが最後にインスリン注入を行ったのは5時間前。飛行機の中では、血糖値が危険なレベルにまで上がっていた。血糖値が異常に高い状態が続くと高血糖緊急症を起こし、昏睡や、最悪の場合命の危険もあり得るといわれている。
たまたま医者が乗り合わせていたが
幸運にもその飛行機には医者が乗り合わせていた。しかもその医者自身も糖尿病で、自分用にペン型のインスリン注射器を持ち歩いていた。
Thomasさんは、インスリンポンプの器具は無かったが、それに詰めるインスリンのカートリッジは持っていた。そこで医者は、自分のペン型注射器に形の合わないThomasさんのカートリッジを何とか取り付け、インスリン注射を試みた。
だが、ボタンを押せば出てくるはずのペン型注射器の針が出てこない。それまで普通に使えていたものが、その時になって故障した。ここで、医者もパニックに陥った。
そして、キャビンアテンダントにこう告げたそうだ。
「今すぐインスリン注射が必要だ。そうしないと多臓器不全を起こし、昏睡状態に陥り、最悪のこともあり得る。すぐに緊急着陸するように」
技術系学生が設計図をネットで検索
この様子を見ていたインド工科大学のMangalamさんは、キャビンアテンダントに機内のWiFiを使わせてくれるように頼み、インターネットで壊れたペン型注射器の設計図を探した。
見つけ出したメーカーオリジナルの設計図を詳しく見ると、針が出ないのは単にスプリングがおかしくなっているか、無くなっているせいだと分かった。
そこで乗客からボールペンを提供してもらうようにキャビンアテンダントに頼んだ。するとすぐに、数名の乗客が持っていたボールペンを出してくれたという。
ボールペンを次々に分解し、ペン型注射器に合うものを見つけて取り付けた。医者がそれを使ってインスリンを注射すると、Thomasさんの血糖値は下がり始め、やがて正常に戻った。旅客機の緊急着陸は回避された。
今年2月にあったこの出来事は、インド工科大学の学内誌最新号で記事として取り上げられ、5月7日にツイートされた。ツイートはこれまで1,200回以上リツイートされている。
Thomasさんは、飛行機がニューデリーに到着した後、メディカルチェックのために病院に運ばれた。Mangalamさんもそれに付き添ったそうだ。
「ストレッチャーに載せられた彼(Thomasさん)は、僕に何度もお礼を言ってくれました。彼はアムステルダムにレストランと醸造所を持っているそうで、『ぜひ一度来てくれ』と言っていました。行けばきっと料理は食べ放題、ビールも飲み放題になるでしょう!」海外メディアの取材を受けたMangalamさんはこう語っている。(了)
出典元:Hindustan Times:IIT-Kanpur student says engineering skills helped save man’s life on flight(5/11)
出典元:Good New Network:Instead of Plane Making Emergency Landing, Engineer Fixes Medical Device Using Only a Pen(5/11)