ヨーロッパで検出された放射性物質、ロシアの核再処理施設での事故が原因か
数年前、ヨーロッパ中で大量の放射性物質が検出されたことについて、今回報告書が提出された。
ヨーロッパの広範囲で検知
2017年、ヨーロッパの研究者らは、さまざまな国で放射性同位元素「ルテニウム106」を含む雲を検知していたという。
その雲はロシア南部から発生したとみられていたが、正確な場所を突き止めることは困難だったそうだ。
しかし今回、70名以上の科学者が当時の資料をまとめた報告書を発表。それらが機関誌「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」において発表された。
ロシアは事故について認めず
その報告では、雲に含まれていた放射性物質は民間の核燃料再処理施設から漏れ出た可能性が指摘されており、その場所がウラル山脈南部、チェリャビンスク州にあるマヤーク核施設の可能性が高いとしている。
つまりその施設で放射能漏れ事故が起きたことが考えられているが、ロシア政府は以前から原子力事故について認めていない。(ただし同国気象庁は当時、高い放射性物質の汚染を確認し、発表している)
この事故が起きたのは、2017年9月25日の午後6時から翌日の正午ごろまでと考えられており、9月27日から10月13日にかけてフィンランドやオーストリア、スイスをはじめとするヨーロッパの14カ国で「ルテニウム106」が確認されたという。
ヨーロッパで観測された放射能レベルは、大気中1立方メートルあたり176ミリベクレルで、人体に影響はないものの、福島原発事故以来この地域で観測されるトータルのレベルよりも100倍も高い数値だったそうだ。(通常の1000倍)
しかもこの事故は福島原発事故以来、最も深刻な放射性物質漏洩事故だったにもかかわらず、一切公に知らされていない。
1957年にも大規模な事故を起こしていた
そもそもマヤーク核施設は1957年9月29日にも事故(ウラル核惨事)を起こしており、これは深刻さではチェルノブイリ原発事故に次ぐものだったとされている。(国際原子力事象評価尺度ではレベル6(大事故)に分類され、チェルノブイリ原発事故や福島第一原発事故に次いで、歴史上3番目の重大な事故とされている)
当時は、プルトニウム生産から排出される液体廃棄物を含んだタンクが爆発(化学爆発)。半減期が長い同位体を含む大量の放射性物質が大気中に放出され、チェリャビンスク州、スベルドロフスク州、チュメニ州の一部にも拡散したという。
今回の調査を行ったハノーバー大学のGeorg Steinhauser教授は、2017年に起きた事故について次のように語っている。
「私たちは事故が、使用済み燃料物質の再処理の時に起きたこと、またそれが進行した段階であったこと、一連のプロセスの終わり間近に起きたことを示すことができました」
ただしチェルノブイリや福島原発事故が数日続いたのに対し、2017年の事故はすぐに収束したと考えられているそうだ。(了)
出展元:METRO:Russia blamed for nuclear accident which sent a radioactive cloud floating across Europe(7/30)