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不妊症治療対象外のゲイカップル、ニューヨーク市などを提訴

不妊症治療対象外のゲイカップル、ニューヨーク市などを提訴
Flickr_conceptphoto.info

ニューヨーク州の元地方検事補であるコーリー・ブリスキンさん(35)と、その夫であるニコラス・マジピントさん(38)は、ニューヨーク州の不妊症の定義は男性同士のカップルを差別しており、連邦および州の公民権法に違反していると主張。5月9日にニューヨーク市、エリック・アダムス市長、ビル・デブラシオ元市長らを相手に訴訟を起こした。

 

差別的だとされた不妊症の定義

 

マジピントさんと結婚をした1年後の2017年から、ニューヨーク市で働き始めたブリスキンさん。

 

国民全員が公的医療保険に加入する国民皆保険制度である日本とは異なり、アメリカでは一般的に、福利厚生の一環として企業が従業員に民間医療保険を提供している。

 

ニューヨーク市が提供している医療保険では、不妊症の治療も適用されるのだが、不妊症の定義が「12ヵ月間の無防備な異性間セックス、または人工授精でも子供を授からない状態」としている。この内容では、異性愛者カップル、レズビアンカップル、独身女性はカバーされるが、ゲイカップルのみが除外されることとなる。

 

このことが、市の立場が同性愛者の父親に対する偏見を助長し、ゲイカップルや独身のゲイは親になるのにふさわしくないという、性と性的指向に基づく固定観念を助長していると、今回の訴訟に至ったのだ。

 

彼らが求める不妊症の定義とは

 

ブリスキンさんらが求めている不妊症の定義が、2023年10月に米国生殖医学会(ASRM)が採用したものだ。それによると、不妊症は「ドナー配偶子を含む医療介入が必要な疾患、状態、または事態」とされており、この定義であればすべての同性愛者が当てはまることになる。

 

現在、同性のカップルに不妊症治療を認めている州はニューヨーク州を含めて7つしかないが、この訴えが認められると、病歴や性別に関係なく、すべての同性愛者を不妊症と定義する判例となる。

 

ゲイカップルが自分の子を得るのにかかる費用

 

ゲイカップルが自分の遺伝子を受け継いだ子を、体外受精と代理出産(米国国内の親)で得る場合にはいくらぐらいかかるのだろうか。

 

権利擁護団体「Men Have Babies」が2023年に試算したところ、上記の条件でかかる総費用は17万7,950ドル(約2770万円)から26万1,550ドル(約4070万円)とのこと。

 

ニューヨーク市職員としての収入では望みが叶えられないことを知ったブリスキンさんは、資金を得るために地方検事補を辞めて民間企業に転職した。その結果、十分な資金を得られるようになり、体外受精治療を受けて代理母を見つけたそうだ。もし保険が適用されていれば、体外受精には保険が適用され、代理出産の費用は自己負担となるはずだった。

 

参考:The Guardian「Gay couple sues New York leaders over denial of IVF benefits in landmark case」(5/9)

参考:NBC「Gay couple files first-of-its-kind class action against NYC for IVF benefits」(5/10)
アイキャッチ画像出典元:conceptphoto.info/Flickrのクリエイティブコモンズ

 

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