トランプ政権が政策に反対する判事の弾劾を要求、法治国家の危機か?

トランプ政権は、自身の政策に不利な判決を下す裁判所に対して、「前例のないほどの抵抗」を見せているという。
国外追放で、判事の命令に従わず
特に先週、トランプ政権が「適性外国人法」に基づき、ベネズエラの犯罪組織の構成員とみられる200人以上を国外追放させたことを巡り、政権と裁判所との間で緊張が高まっているそうだ。
ワシントン連邦地裁のジェイムズ・ボアズバーグ判事は3月15日夜、国外追放の対象者、200人以上を乗せたフライトの引き返しを命令した。
しかし、飛行機はそのままエルサルバドルに到着。トランプ政権は、ボアズバーグ判事の命令は書面ではなく口頭だったため執行不能で、命令が出された時点で移送機はすでにアメリカを出発しており、引き返せなかったと理由を述べた。
ボアズバーグ判事はその後、政府に飛行機の引き返しを明確に命令したと主張。それに従わなかったトランプ政権を非難した。
「裁判官が、どう思うかは気にしない」
これに対しトランプ大統領は、ボアズバーグ判事を「極左の狂人」と呼び、弾劾を要求。またトランプ政権で国境担当責任者のトーマス・ホーマン氏も、3月17日のテレビインタビューで、「裁判官(判事)が、どう思うかは気にしない」と述べた。
そもそも司法機関が法律を解釈する権限を持ち、他の政府機関はその判決に従わねばならず、それがアメリカ政府の基本的な柱の1つになってきた。
そして第2次トランプ政権が発足して以来、12人以上の判事が、連邦職員の大量解雇や連邦資金の凍結、出生地主義の廃止などの大統領令の執行を阻止してきた。
しかしJ・D・ヴァンス副大統領は2月9日、「裁判官が行政府の正当な権力をコントロールすることは許されていない」と発言。イーロン・マスク氏も、裁判官の弾劾を繰り返し求めており、弾劾を支持する共和党議員に寄付しているという。
そして先日、共和党下院は、トランプ大統領に不利な判決を下した、ボアズバーグ判事と他の4人の判事を弾劾する決議案を提出した。
「憲法上の危機にある」
トランプ氏の弾劾要求について、連邦最高裁のジョン・ロバーツ長官は異例の非難声明を発表。「2世紀以上にわたり、弾劾は司法判断に同意しないための、適切な対応ではないことが確立されている。通常の上級審の審理プロセスは、そのために存在する」と述べた。
またジョージタウン大学の法学教授、スティーブン・ブラデック氏も、アメリカの歴史で同様の状況はなかったとし、「共和党が裁判所を試している」「不利な裁判所の判決に対する、行政府の前例のない抵抗だ」と述べたという。
さらに元保守派連邦判事のJ・マイケル・ラティグ氏も3月18日、MSNBCの番組で「アメリカは憲法上の危機にある」「大統領は、本質的にアメリカの法の支配に宣戦布告した」と主張した。(了)
出典元:The Guardian:Trump’s defiance of court orders is ‘testing the fences’ of the rule of law(3/23)