英政府、イスラエルとの貿易協定交渉を停止、ガザ地区での戦闘停止を求める

イギリス政府は、ガザ地区での戦闘停止と、人道支援物資の搬入を求め、イスラエルとの貿易協定交渉を一時停止すると発表した。
入植活動家らにも制裁を科す
イギリスのラミー外相は5月20日、声明を発表し、イスラエル政府がガザ地区で「言語道断な政策」を推し進めている限り、協議を前進させることはできないとして、ネタニヤフ政権とFTAに関する自由貿易協定交渉を一時停止すると述べた。
またヨルダン川西岸地区で入植活動を率いているDaniella Weiss氏を含む3人、及び2つの違法な拠点と2つの組織を対象とし、制裁を科すと発表した。
さらにガザ地区で11週間にも及び人道支援物資の流入を阻止していること、またイスラエル軍が戦闘を拡大させていることに抗議するため、駐英イスラエル大使のTzipi Hotovely氏を召喚したことを明らかにした。
イスラエル政府は反発
これに対しイスラエル外務省の報道官であるOren Marmorstein氏は、イギリス政府の新たな措置は、「反イスラエルへのこだわり」だとし、「外部からの圧力は、存在と安全を守る道からイスラエルを逸らすものではない」と述べたという。
またMarmorstein氏は、イギリス政府が自ら自国の経済に悪影響を及ぼしているとも指摘したそうだ。
国際慈善団体「オックスファム」は、イギリス政府が、ガザ地区とヨルダン川西岸地区におけるイスラエルの行動に対する措置を決定したことを歓迎。
しかしその一方で、イスラエルへの武器供与の全面停止を含む、より厳格な措置が依然として必要だと主張し、次のように述べた。
「イスラエルのF-35戦闘機への部品供給を停止しなければ、イギリス政府はガザ地区全域で数千人の民間人の死に加担し続けることになる。(略)イスラエルが飢餓を戦争の武器として利用するという戦争犯罪を犯している一方で、ガザ地区では数千人の子供を含む人々が飢えに苦しんでいる」
その上で「オックスファム」のイギリス支部の責任者、Halima Begum氏はラミー外相に対し、「イスラエルへのすべての武器輸出を停止し、パレスチナを地図から消し去ろうとしているイスラエルの政治指導者と入植者に対して、包括的な制裁措置を科すよう」求めた。
EUも自由貿易協定を見直し
また欧州連合(EU)のKaja Kallas外相も、イスラエルとの自由貿易協定の見直しを命じ、ガザ地区の状況を「壊滅的」だと述べた。
Kallas外相は、イスラエル政府がガザ地区への人道支援を阻止し、栄養失調による死者と迫り来る飢饉を引き起こしたとして非難。協定見直しの決定が覆るかは、イスラエルの行動次第だと述べたという。
EU各国の首脳も、イスラエルへの批判を強めており、ポルトガルやスペイン、アイルランド、フランス、北欧諸国も、イスラエルがガザ地区への支援物資搬入を認めず、戦闘を止めなければ、EUが制裁を科す可能性もあると述べている。
ただEUでの意思決定プロセスは全会一致でなければならず、ドイツやギリシャ、ハンガリーなどはイスラエルへの制裁に消極的なため、より強い制裁を科すことは極めて困難だとの見方もある。
イスラエルが搬入の許可を出さず
イスラエル政府は5月19日、ガザ地区への少量の支援物資の搬入を認め、国連も約100台の支援トラックがガザ地区へ入る許可を得たと発表していた。
しかし20日には、イスラエル側は許可を出しておらず、国連もガザ地区への支援物資の搬入ができなかったと明らかにした。
またアメリカのルビオ国務長官は、議会の上院外交委員会に対し、ガザ地区へ向かう最初のトラックに加え、さらに100台のトラックが到着しており、今後数日中にさらに多くのトラックがガザ地区へ入る可能性があるとの見方を示した。
さらにルビオ国務長官は、アメリカ政府が現在、リビアへガザ地区のパレスチナ人を強制移住させようとしているとの報道について問われ、その件については協議していないと述べたという。
ただしアメリカ政府が現在、他の国々に対し、自発的に移住を希望するパレスチナ人の受け入れについて打診していると明らかにした。(了)
出典元:Aljazeera:LIVE: Israel defiant as pressure mounts over ‘war of annihilation’ in Gaza(5/20)