「イランの核施設は破壊されず、数カ月以内に再稼働が可能」米情報機関が初期報告

アメリカの情報当局が、6月21日に実施されたイランの核施設への攻撃の成果について、初期調査の結果を発表した。
高濃縮ウランの多くが攻撃前に移動
国防総省の情報機関である国防情報局(DIA)とアメリカ中央軍によって作成された報告書によれば、2つの核施設は破壊されず、核開発計画は数カ月遅れた程度にとどまった可能性が高いという。
また遠心分離機もほぼ無傷で、核開発計画の主要な設備は、数カ月以内に再稼働可能だと結論付けられたそうだ。
さらに核兵器に使用可能な高濃縮ウランの備蓄の多くが、攻撃前に、イランが管理する他の秘密の核施設に移された可能性がある、と報告書は指摘している。
もっともこの戦果の評価はまだ初期段階にすぎないが、政府関係者によれば、イランのフォルドゥ濃縮施設が破壊されていないと確認されれば、イランの核施設の被害がさらに少なかった可能性が示唆されるという。
トランプ氏の主張が誇張である可能性
アメリカ軍によるイランの核施設への攻撃では、「B-2」ステルス爆撃機がフォルドゥの核施設に12発のバンカーバスター「GBU-57」を、ナタンズの核施設に2発の「GBU-57」を投下したと言われている。
またアメリカ海軍の潜水艦が、イスファハンの核施設に向けて、約30発のトマホークミサイルを発射したそうだ。
その後、トランプ大統領は21日のテレビ演説で、アメリカ軍がイランのナタンズとフォルドゥ、そしてイスファハンのウラン濃縮施設を完全に破壊したと述べ、作戦が成功したと称えた。
しかし、この報告書が本当であれば、トランプ大統領の主張が誇張されていた可能性がある。
「大統領を貶めようとしている」
この報告書の内容はCNNが最初に伝えたが、その後、ピート・ヘグセス国防長官は記者会見で、核施設が「壊滅状態」になったとするトランプ大統領の主張を繰り返し、「爆弾が破壊的ではなかったと主張する者は、大統領と成功した作戦を貶めようとしているだけだ」と述べたという。
またホワイトハウスのリービット報道官も、この調査結果に異議を唱え、「下級クラスの敗者」がCNNにリークしたと主張し、次のように述べた。
「この評価とリークは、トランプ大統領の名誉を傷つけ、イランの核開発計画を壊滅させるという完璧な任務を遂行した、勇敢な戦闘機パイロットたちの信用を失墜させようとする明らかな試みです。重さ3万ポンドの爆弾14発を標的に完璧に投下すれば、何が起こるかは誰もが知っています。完全な壊滅です」
ただJ・D・ヴァンス副大統領は6月22日、イランの高濃縮ウランの備蓄がどこにあるのかは把握していない、と認めている。
また今年1月、「GBU-57」を開発した国防総省の国防脅威削減局(DTRR)は、爆弾がフォルドゥ核施設の地下深くまで貫通できず、戦術核兵器でしか破壊できないと、政府関係者に説明していたという。(了)
出典元:The Guardian:US strikes on Iran’s nuclear sites only set back program by months, Pentagon report says(6/24)
出典元:ABC News:Early US intel assessment finds strikes set back Iran’s nuclear program only by months(6/25)