米政府、ウクライナに「ATACMS」を供与せず、ポーランドも武器供与を停止へ
アメリカのバイデン大統領と、ウクライナのゼレンスキー大統領が9月21日、会談を行ったが、長距離ミサイルの供与については今回の追加軍事支援には含まれなかった。
射程300kmに及ぶ「ATACMS」
ウクライナのゼレンスキー大統領は9月21日、ワシントンD.C.にあるホワイトハウスを訪れ、バイデン大統領と会談を行った。
会談の冒頭で、ゼレンスキー大統領は「特に防空に重点を置いた、話し合いを楽しみにしている」と述べた。
その後、ウクライナに対する追加軍事支援の内容が発表されたが、その中に射程300kmに及ぶ戦術ミサイルシステム「ATACMS」が含まれないことが明らかとなった。
承認されると楽観視
ウクライナは以前から「ATACMS」の供与を望んでおり、ロシア軍の後方を攻撃し、補給を妨害し、敵軍の士気を低下させるために必要だとの見方を示していた。
またここ数日、アメリカ政府が「ATACMS」の供与を承認する方向で動いていると報じられており、ゼレンスキー大統領も、このミサイル供与が承認されるだろうとの楽観的な見方を示していた。
しかし、バイデン大統領が「ATACMS」を供与しないと決断したことで、ウクライナ政府関係者を失望させたとみられている。
アメリカの政府関係者は以前、国防総省が「ATACMS」の在庫に懸念を抱いており、またホワイトハウスがロシアから直接戦闘に参加していると見られることを恐れ、ロシアの領土を攻撃する可能性のある武器を供給しないと考えている、と述べていた。
ただ、ホワイトハウスのサリバン大統領補佐官(安全保障担当)は21日、「総合的に考えてATACMSを供与しないと判断したが、将来的に選択肢から外したわけではない」と述べ、供与について引き続き検討を進める考えを示したという。
農産物の輸入禁止がきっかけ
一方、これまでウクライナを支援し続けてきたポーランドの首相が、今後武器供与をしないと明らかにした。
両国の関係が悪化したきっかけは、今年4月にポーランドなどが、自国の農業を保護するため、ウクライナから流入する安価な農産品の輸入禁止措置を行ったことだ。
通常、ウクライナ産の穀物の多くは黒海経由で輸出されるが、ロシアの侵攻により、輸出ルートが寸断され、大量の穀物が中央ヨーロッパに滞留。ポーランド国内の市場にも安価なウクライナ産の穀物が流れ込み、農作物の市場価格が下落し、農家らが訴えていた。
5月には、EUも輸入制限を認めたが、先週EUは市場の歪みがなくなったとして、輸入制限を撤廃。この判断にポーランドやハンガリー、スロバキアは、即座に反対する姿勢を示した。
この動きにウクライナ側も反発し、9月20日にはゼレンスキー大統領が国連総会の演説で、ポーランドなどの国々を非難。
その結果、ポーランドのMateusz Morawiecki首相も20日、将来的には自国の防衛を優先することを決定したとし、「ウクライナへの武器供与は終了し、ポーランドはより近代的な武器で武装する」と述べたという。
ただしポーランドのドゥダ大統領は、Morawiecki首相の言葉が「最悪の形で」誤解されていると主張。「私の意見では、首相が述べたのは、ポーランド軍を近代化するために、現在購入している新兵器をウクライナに移さないという意味だと思う」とメディアに語った。(了)
出典元:The Guardian:Russia-Ukraine war: Zelenskiy ‘looking forward to discussing air defense’ with Biden before US announces ‘significant’ military aid – as it happened(9/21)
出典元:The Guardian:Poland will no longer send weapons to Ukraine, says PM, as grain dispute escalates(9/21)