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中国政府が任命したチベットの「パンチェン・ラマ」がタイを訪問、その裏にある目論見とは?

中国政府が任命したチベットの「パンチェン・ラマ」がタイを訪問、その裏にある目論見とは?
Twitter/Bangkok Informer

チベットでダライ・ラマに次いで2番目の高位にあるとされる人物が、先月中国からタイに派遣された。

 

中国共産党を称えるコメント

 

その人物とは、ギェンツェン・ノルブ氏だ。

 

中国メディアによれば、彼はパンチェン・ラマとして今年5月中旬に初めて国外へ出て、タイを訪れたという。

 

ノルブ氏は、バンコクにある仏教大学でスピーチを行い、他の仏教徒が主催するイベントにも参加。そこで彼らと交流を深めたそうだ。

 

その後、ノルブ氏はChinese News Serviceに対し「この訪問は、母国と中国共産党の偉大さを気づかせてくれました。中国人民を立ち上がらせ、豊かに強くするよう導いている中国共産党に感謝します」と述べている。

 

中国共産党に任命されたパンチェン・ラマ

 

現在、チベットの人々の精神的支柱となっているのはダライ・ラマ14世だ。パンチェン・ラマとは、彼に次ぐ地位にある宗教的権威とされている。

 

実はダライ・ラマ14世は以前、6歳のゲンドゥン・チューキ・ニマ少年を10世の転生者としてパンチェン・ラマ11世に任命していたという。

 

しかしその後、ゲンドゥン・チューキ・ニマ少年は中国当局によって連れ去られ、以来公の場から姿を消してしまう。

 

そして1995年、中国共産党はノルブ氏をパンチェン・ラマ11世に任命した。

 

ノルブ氏は2012年にも香港を訪れているが、今回は初めて中国国外へ出たことになる。

 

ここには、自ら任命したパンチェン・ラマを徐々に露出させることにより、チベットや世界から尊敬を集められるようにする、中国共産党の思惑があるようだ。

 

少年の行方は未だ分からず

 

1950年、中国共産党はチベットに侵攻。チベットの文化や宗教を守るとしながらも、批判を許さず、数々の弾圧を行ってきた。

 

この結果、1959年にはダライ・ラマ14世がインドへ脱出。そこで亡命政府を樹立したが、その時パンチェン・ラマ10世はチベット自治区内にとどまっていたという。

 

そして当初は中国共産党に協力的だと考えられていたが、その後パンチェン・ラマ10世は批判を展開。このため、10年以上も刑務所へ入れられたり、自宅軟禁させられたりしたそうだ。

 

しかし1977年にはチベットから逃れることに成功。再び政治的に復帰するも、1989年には亡くなってしまう。

 

その後、ダライ・ラマ14世は、6歳のゲンドゥン・チューキ・ニマ少年をパンチェン・ラマ11世に任命するが、現在は行方も分かっていない。

 

今年の4月に、パンチェン・ラマ11世のゲンドゥン・チューキ・ニマ少年は30回目の誕生日を迎えたが、中国政府は「少年が生きている、通常の生活を送っている」としただけで、詳細については明かしてない。(了)

 

ダライ・ラマ法王日本代表部事務所のサイトには、現在のチベットを巡る状況も詳しく示されている。そちらも是非、ご覧いただきたい。

 

出典元:REUTERS:China says its Panchen Lama made first trip outside country in May(6/11)

出典元:Taiwan News:China sent Panchen Lama to visit Thailand(6/12)

参考:Wikipedia:パンチェン・ラマ

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