光をあてるだけでインフルエンザの拡散を防ぐ?紫外線によるウィルス抑止に成功
特殊な紫外線をあてると人間に害を及ぼさず、インフルエンザのウィルスを死滅させる可能性があるという研究結果が、2月9日に「Scientific Reports」において発表された。
インフルエンザのウィルスを殺すことに成功
アメリカのコロンビア大学アービング・メディカルセンターで行われた新たな研究によれば、遠紫外線C(far-UVC)を連続的に低線量あてることで、人体に害を及ぼすことなく、空気中に漂うインフルエンザ・ウィルスを殺すことができたという。
さらにこのことから病院や診療所、学校、空港、飛行機内、他の公共施設等で遠紫外線Cを使用することで、季節ごとに蔓延するインフルエンザや、その爆発的感染を強力に阻止できる可能性があるそうだ。
公の場での使用は控えられていた
研究者らは約10年も前から、200から400ナノメーターからなる広いスペクトルの紫外線が、DNAをつないでいる分子の結び目を破壊することによって、バクテリアやウィルスを殺すことにおいて非常に効果的であると知っていたという。
そのため紫外線は手術用の器具を殺菌するために現場では、定期的に使用されていたそうだ。
しかし今回の研究を率いたコロンビア大学のDavid J. Brenner博士は「不幸なことに、通常使われるこの殺菌力のある紫外線は人間に健康被害をもたらし、皮膚ガンや白内障を引き起こし得るため、公の場での使用は控えられてきたのです」と語っている。
人体を傷つけずMRSAを殺すことに成功
ただ数年前に、Brenner博士と仲間の研究者らは、遠紫外線Cと呼ばれる波長が狭い紫外線は、健康な組織を壊すことなく、微生物を殺せるのではないかと仮定を立てたという。
というのも遠紫外線Cの範囲は非常に限られているため、人間の皮膚の外側にある死細胞層(角質)や目の中にある涙の層も突き通すことができず、人間の健康にも被害を及ぼさないからだとしている。
しかしウィルスやバクテリアは人間の細胞よりもずっと小さいため、遠紫外線C はそれらのDNAに届いて貫通し、殺すことができると考えられたという。
実際、初期研究においてもBrenner博士は遠紫外線Cが、人間やマウスの皮膚を傷つけずにMRSAというバクテリアを殺すのに効果的であると証明できたそうだ。
遠紫外線Cがウィルスの活動を食い止める
そのため今回の研究では、公共施設と同じ環境を用意し、空気中に漂うエアロゾル状のインフルエンザ・ウィルスを、遠紫外線Cが殺せるかというテストを行った。
そこではH1N1型のウィルスがテスト用の小部屋に解き放たれ、その後222ナノメーターの遠紫外線Cを非常に低い線量で当てたという。
もっともその実験では管理されたエアロゾル状のウィルスは紫外線に晒されていない。しかし遠紫外線Cは殺菌消毒する紫外線と同じようにインフルエンザ・ウィルスの活動を食い止めたそうだ。Brenner博士は次のように語っている。
「もし私たちの今回の結果が、他の設定でも確かめられれば、次は公共の場での低いレベルの遠紫外線Cの間接的な使用が安全かどうか、またインフルエンザや結核のような微生物が引き起こす空気感染による病気の広がりや伝染を食い止めるのに有効な手段か、を確かめることになるでしょう」(了)
下の動画はMRSAでの実験の様子。
出典元:Columbia University Medical Center:Can ultraviolet light fight the spread of influenza?(2/9)