米での癌ワクチンの開発、第2相の臨床試験を実施
アメリカで癌のワクチン開発が進められており、人間に対する臨床試験が実施されている。
副作用で苦しまない治療法を目指し
癌ワクチンの研究を続けているのは、バイオテクノロジー企業「オルビス・ヘルス・ソリューションズ」の創設者で、癌研究者のトーマス・ワグナー博士だ。
ワグナー博士によれば、化学療法などの従来の癌治療の多くは、癌細胞を死滅させることで機能するが、体全体の非癌細胞も死滅させるという。
これにより、脱毛や吐き気、嘔吐などのさまざまな副作用が引き起こされたり、人の免疫システムが機能不全に陥り、感染症の危険にさらされたりする可能性があるそうだ。
癌患者が副作用で苦しんでいるのを見た後、ワグナー博士は人の免疫システムを利用して癌を治療する方法を模索し始めたという。
現在、その治療法はワクチンとして発展し、すでに数十年にわたって研究されており、ワクチンは各患者に合うよう、個別に適応されているそうだ。
免疫系が癌そのものと戦う
癌細胞は人の細胞として認識されるため、人間の免疫システムを回避する。このためワグナー博士は、「Tumor lysate particle only (腫瘍溶解物粒子:TLPO)」と呼ばれるワクチンを開発した。
これはある部位を特定するために、人間の腫瘍細胞を使い、その後それらはワクチンを使いながら、体内に戻されるという。
これにより、免疫系を刺激して、癌細胞を検出する能力を得ることができ、また感染症のように、免疫系が癌そのものと戦うことを可能にするそうだ。
ワグナー博士によれば、この種の癌治療は早期発見と組み合わせることで、あらゆる癌の治療法を発見する鍵となる可能性があるという。
第2相臨床試験を実施
ワグナー博士の「TLPO癌ワクチン」は現在、数百人の進行性黒色腫患者を対象に、第2相臨床試験が行われている。
発表された最新のデータによると、ワクチンのみを投与された人のほぼ95%が、治療開始後3年経っても生存しており、64%が依然として無病(再発などがない)であることが示されたという。
ステージIIIの患者における3年後の無病生存率は、ワクチンのみのグループでは60%であるのに対し、プラセボ(偽薬)グループでは約39%だったそうだ。
ステージIVの疾患を持つ人の無病生存率は、ワクチンのみのグループでは約68%だったが、プラセボグループではゼロだったという。
このワクチン療法での一般的な副作用は、免疫反応を刺激する他のワクチンと同様、注射部位の発赤や痛み、注射後の発熱、倦怠感だったそうだ。
第2相臨床試験の結果は有望だったが、この分野で変革をもたらすかは、より大規模な第3相臨床試験で最終的に検証される必要がある、との意見もあるという。(了)
出典元:ABC News:Cancer vaccine with minimal side effects nearing Phase 3 clinical trials(1/20)