ボノボのオスは、平和を愛する動物ではない可能性
チンパンジー属に分類される霊長類のボノボ。かつては性質が穏やかで、争いの少ない社会を築いていると指摘されてきたが、そうではない可能性が出てきた。
オス同士の争いでは攻撃性が高い
チンパンジーは、互いに攻撃性を示し、時には死に至ることがあると言われている。一方、アフリカ中央部のコンゴ盆地に生息しているボノボには、殺し合いが見られず、より調和的に暮らしていると長い間考えられてきた。
しかし今回、ボストン大学などの研究チームの観察により、特にオス同士が殴り合いになったケースでは、ボノボはチンパンジーよりも攻撃性が高いことが示されたという。
研究論文の筆頭著者であるボストン大学のMaud Mouginot博士は、「今わかっていることは、ボノボとチンパンジーは攻撃性を利用し、彼らは異なった方法で使っているということだと思います。彼らはそれに関し、異なった戦略を持っているのです」と語っている。
ボノボの方が2.8倍も多い
Mouginot博士の研究チームは、コンゴ民主共和国のココロポリ・ボノボ保護区の3つのコミュニティで、12頭のオスのボノボを観察。またタンザニアのゴンベ国立公園の2つのコミュニティで、14頭のオスのチンパンジーを観察したという。
そして起きている時間中に、オスを個別に追跡し、攻撃的な身体的接触や、突進したり追いかけたりする攻撃的な行動など、他のメンバーとの相互作用を記録したそうだ。
結局、研究チームは2047時間にわたって追跡したボノボの行動の中で、521件の攻撃的な行動を記録。一方、7309時間にわたって追跡したチンパンジーの間では、654件の攻撃的な行動を記録したという。
従来の研究では、チンパンジーは殺しや子殺し、性的強制など、より深刻な攻撃性を示すと言われてきたが、オス同士の間の攻撃的行為は、チンパンジーよりもボノボの方が2.8倍多く、特に身体的接触を伴う行為は3.0倍も多いことが判明した。
メスの扱い方が異なる
また研究者によれば、オスのボノボは、チンパンジーとは異なる方法で、メスを扱っていたという。
実際、ボノボの方がチンパンジーよりも、オスのメスに対する攻撃性が少なく、メスのオスに対する攻撃性の方がより一般的だったそうだ。
このことから研究者らは、メスのボノボがしばしば社会集団内で、オスよりも上位にいることを突き止めたという。
すでに文献でも、ボノボのオスとメスは密接な関係を形成していることが示されているが、チンパンジーの場合は、そのような関係は観察されていないそうだ。(了)
出典元:The Guardian:Bonobos not the peace-loving primates once thought, study reveals(4/12)