国内外来種も脅威!北海道のカエルが本州から運ばれた両生類を食べて中毒死
国外から運ばれる外来種の生物が問題になっているが、日本国内の他の地域から人為的に運ばれた生物(国内外来種)によっても、在来種が影響を受けていることが研究によって示唆された。
高い確率で中毒死していた
この研究を行ったのは、北海道大学北方生物圏フィールド科学センターの岸田治准教授と北海道大学大学院環境科学院修士課程修了生のEvangelia Kazila氏ら。
彼らは本州から移動してきたアズマヒキガエルの幼生が、北海道に元から住んでいるエゾアカガエルとエゾサンショウウオの幼生に与える影響を調査したという。
研究ではアズマヒキガエル幼生の在・不在を操作した実験により、エゾアカガエルの幼生がアズマヒキガエルの幼生を捕食すると、高い確率で中毒死していることを突き止め、その論文が11月5日(協定世界時)にFreshwater Biology誌において掲載された。
下の写真は左が中毒死したエゾアカガエルの幼生、右が中毒死したエゾサンショウウオの幼生。
野外の密度を再現した水槽実験
そもそも野外ではこれらの3種のうち、エゾアカガエルが最初に孵化し、それから2~3週間ほど遅れて、エゾサンショウウオとヒキガエルが孵化するそうだ。
そこで研究者らは孵化した直後のヒキガエルの幼生と、それと同時期に成長しているエゾサンショウウオとエゾアカガエルの幼生を水槽に入れて、在・不在の実験を行った。
この野外の密度を再現した水槽実験では、ヒキガエルが1尾捕食されることで、エゾサンショウウオは平均して約0.4尾が死亡。
しかしエゾアカガエルでは約2尾も死ぬことがわかり、ヒキガエルの存在がエゾアカガエルに対して強く影響することが示されたという。
またエゾサンショウウオとエゾアカガエルとで、ヒキガエルからの影響の強さが異なる理由を詳しく調べたところ、まずエゾサンショウウオに比べ、エゾアカガエルはヒキガエルの毒への耐性が著しく低いことがわかったそうだ。
さらに餌のとり方も、エゾアカガエルがヒキガエルの影響を強く受ける原因になっていたとか。
実際、エゾサンショウウオの幼生が餌を丸呑みにするのに比べ、エゾアカガエルの幼生は餌をかじって食べ、しかも1尾のヒキガエルに複数の個体が群がって捕食することがあるため、複数のエゾアカガエルがまとめて死んでしまうという。
また本来、エゾアカガエルは生物遺骸を主食の一つとしており、ヒキガエルを食べて中毒死した在来種の遺骸を食べてしまう。この結果、死体に含まれるヒキガエルの毒性物質を取り入れ、中毒死する場合があることも確かめられたそうだ。
国内外来種の研究はほとんどない
外来種といえば外国から運ばれてきた種が問題となってきたが、日本国内でも本来の生息地から離れて別の地域へと人為的に運ばれた種(国内外来種)が多く存在しているという。
しかしその影響については、これまでほとんど調べられてこなかったそうだ。
また北海道では函館、旭川、石狩などで本州原産の国内外来種アズマヒキガエルの生息が確認されており、北海道ブルーリスト(北海道の外来種リスト)に掲載されるなど、在来種に対する影響が懸念されてきたとか。
研究者らは実際に野外でもヒキガエルの毒性効果が発揮されているのか、またそれによって在来種の個体数が減少しているのかなど、野外での実態を早急に明らかにする必要があるとしている。(了)
出典元:北海道大学:本州から来たヒキガエルが北海道の両生類を殺す(11/6)(PDF)