原油流出事故の影響で、沈んだUボートの腐食がバクテリアにより進む
第2次世界大戦で沈んだドイツ軍のUボートの腐食が、原油流出事故の影響を受けたバクテリアによって進んでいる可能性が浮上している。
原油を食べるバクテリア
その潜水艦とはナチスドイツの「U-166」と呼ばれるUボートだ。これは1942年にアメリカ沿岸で沈められたという。
そして2001年にメキシコ湾の海底、約1kmの地点で横たわっているのが発見されることに。
しかし2010年には、この付近でDeepwater Horizonという掘削施設が事故を起こし、大量の原油が流出。それを食べるバクテリアによって放出された老廃物が、潜水艦の船体を急速に腐食させている可能性が見えてきた。
船体に大きな穴が開く
この調査を行ったのは、南ミシシッピ大学の研究者たち。彼らは事故によって流出した原油が、酸素を必要とせず増殖できる嫌気性バクテリアに、食料として硫黄や炭素を供給していることを突き止めたという。
そしてこれらのバクテリアが原油を食べることで排出されるものが、金属を腐食させていると考えている。
実際、事故後に撮影された「U-166」の舳先やデッキには、大きな穴が開いているのが確認された。
そもそも海水における金属の腐食の割合は、沈んだ年にピークを迎え、その後腐食の速度は低下していくという。
しかし潜水艦の写真分析から原油流出事故の後、4年間でこれまでの5倍以上が砕けて消滅していることが示されたそうだ。
※下の動画は2014年に公開されたもの。
同一の円盤を複数海底に設置して実験
これを確かめるため、Leila Hamdan教授と研究チームらは、原油流出事故付近の海底に金属の円盤を設置。どのくらいの速さで円盤が腐食していくかをテストした。
16週間後、円盤はネバネバした皮膜のようなもので覆われ、かなり腐食が進んでいたという。
また研究者らは、同一の円盤を80km離して設置したが、事故現場に近い円盤は、離れたものに比べて3倍もの金属が失われていたそうだ。
さらに金属を覆っていた膜の遺伝子検査を行ったところ、さまざまなタイプのバクテリアが見つかり、その中には原油に含まれる炭素を食べるものも含まれていたという。
研究チームのメンバーであるGeorge Mason大学のJennifer Salerno氏は「潜水艦の周りにある沈殿物の中に何があるのか、確かなことは言えません。しかし(潜水艦の)変化はオイルによるものです」と語っている。
これらの結果により、研究チームはバクテリアが原油を食べ、その老廃物が潜水艦の金属を徐々に破壊していったとの結論に至ったそうだ。(了)
出典元:MailOnline:The Nazi submarine being destroyed by bacteria: Oil released from the 2010 Deepwater Horizon spill is providing a breeding ground for metal-eating microbes 3,300 feet under the sea(2/20)
出典元:IFLSCIENCE:Deepwater Horizon Oil Spill Is Corroding Away Nazi Subs And Shipwrecks