歴史を覆す発見か?豪で1000年以上も前にアフリカで作られた硬貨が見つかる
世界史を習ったことのある人であれば、オーストラリアといえば1770年に英国人ジェームズ・クックによって“発見”され、英国領オーストラリアとなった…というのを同国の歴史として記憶している人も多いのではないだろうか。
しかしそんなオーストラリアの歴史を覆す可能性のある発見が行われ、注目を集めている。
タンザニア領の硬貨を発見か?
歴史を覆しかねない発見をしたと主張するのは、考古学者のMike Hermes氏だ。
Hermes氏は、昨年オーストラリア北端のウェッセル諸島において行われた実地調査の際、海岸で銅製の小さな硬貨を発見。
硬貨はインド洋上に浮かぶタンザニア領の島で、発見場所から1万キロメートル以上も離れたキルワ島で製作されたものだとみられているという。
その表面は腐食しており、はっきりと識別可能な特徴も不明瞭とはなってしまっているものの、Hermes氏は硬貨の製作は15世紀以前に行われたとみられるとしている。
'It could change everything': coin found off northern Australia may be from pre-1400 Africa https://t.co/vBjUTzinJA pic.twitter.com/e3eROfxm8B
— doug moncur (@moncur_d) May 11, 2019
発見された硬貨がキルワ島のものであると主張する根拠として、Hermes氏は「重量と大きさを測定したところ、硬貨はキルワ島のものと非常に良く似ていることがわかった」という。
「もし硬貨がキルワ島のものであれば、全て(の歴史)を変える可能性がある」
以前も発見されていた硬貨
しかしこの発見が、なぜ歴史を覆す可能性を秘めるというのだろうか。
キルワ島の硬貨がウェッセル諸島において発見されたのは今回が初めてではなく、このオーストラリアにおける最初の発見は1945年に遡る。
この際、硬貨を発見したのはオーストラリア人の軍人Morry Isenbergで、彼は最初の発見から40年後にも新たなキルワ島の硬貨を見つけている。
この硬貨は1000年ほど前に製作されたものであることが判明しており、“オーストラリアにおいて発見された最も古い硬貨”であると考えられると共に、オーストラリアは現在知られる歴史において伝えられる年代よりも遥か昔に“発見”されていた可能性を浮上させることとなった。
尚、今回の調査においてHermes氏ら調査団はIsenbergが硬貨を見つけた地点の付近を探ることで、新たなキルワ島の硬貨の発見に至ったとしている。
キルワ島の硬貨流入の経緯には仮説も
Hermes氏は「キルワ島の硬貨は、キルワ島とアラビア半島、そしてウェッセル諸島のみにおいて発見されている」としつつ、硬貨がどのような経緯でウェッセル諸島に辿り着いたのかということについては、“不可解である”という。
しかしキルワ島の硬貨がウェッセル諸島において発見される理由としては、複数の仮説も挙げられている。
Hermes氏と共に調査を行った歴史家のMike Owen氏は、キルワ島の硬貨は約700年前のオーストラリア先住民とキルワ島の商人との間において、交流があったことを示唆する可能性があるとする。
キルワ島は中国との間で交易を行っており、中国へと向かう航海の途中で海賊から逃れようとしてキルワ島の商人がウェッセル諸島に辿り着き、商人と島の先住民との間に交流がもたれた、というのがOwen氏の唱える仮説の一つだ。
またOwen氏はキルワ島の商人の船が難破し、その結果硬貨がウェッセル諸島へと流れ着いた可能性をも指摘する。
しかしOwen氏によると、1505年にキルワ島を占領したポルトガル人がウェッセル諸島を訪れ、その際にキルワ島の硬貨を持ち込んだというのが、最も考えられうる仮説として挙げられるという。
Hermes氏ら調査団は、発見された硬貨が本当にキルワ島のものであるのか見極めると共に、それがウェッセル諸島へとたどり着いた経緯について探るべく、今も調査を行っている。
オーストラリアの歴史を変えることになるかもしれない硬貨。その謎が解明される日が訪れることを待ち望むばかりだ。(了)
出典:The Guardian:‘It could change everything’: coin found off northern Australia may be from pre-1400 Africa (5/11)
出典:NEWS.com.au:1000-year-old coins found in Northern Territory may rewrite Australian history(5/13)