タンザニアで発見された謎の足跡、二足歩行の初期人類のものであると判明
過去にアフリカで見つかった足跡の研究がすすめられ、今回二足歩行を行っていた初期の人類のものであることが明らかになった。
最古の足跡は370万年前のもの
そもそも人類最古の直立歩行の証拠は、古生物学者・Mary Leakey氏らが1978年にタンザニアの街、Laetoliで発見した370万年前の足跡とされている。
しかし実はその2年前の1976年にも、この遺跡の近くにある「A遺跡」で、謎の足跡が見つかっていたが、それはクマの足跡であると却下されていたという。
ところが最近になってLaetoliの「A遺跡」の足跡が再発掘され、比較分析が行われた結果、これらの足跡が二足歩行の初期人類のものであると明らかになった。
アウストラロピテクスの足跡
Laetoliの街にある「G遺跡」と「S遺跡」で発見された足跡は、最初の人類と呼ばれる「ルーシー」と同じ種であるアウストラロピテクス・アファレンシスのものと一般的には考えられている。
しかし、「A遺跡」の足跡があまりにも違っていたため、当時研究者の中には、後ろ足で直立して歩く若い熊の足跡ではないかと考えた人もいたらしい。
そこで2019年6月、「A遺跡」での足跡を特定するため、コロラド大学デンバー校の人類学准教授・Charles Musiba氏が率いた国際研究チームがLaetoliの街へ向かい発掘。
連続する5つの足跡を再発掘し、計測、写真撮影、3Dスキャンを行った。また分析の結果、それらの足跡には、踵と母趾の大きな痕跡など、ヒト科の動物のものと思われる証拠が見つかったという。
クマの歩き方と比較、動画でも観察
その後研究者たちは、「A遺跡」の足跡を、ツキノワグマ、チンパンジー、人間の足跡と比較。「A遺跡」の足跡と同じ大きさの足を持つ、幼いツキノワグマ4頭に泥の上を歩いてもらい、足跡を採取したそうだ。
また野生のツキノワグマの動画、50時間分を観察。しかしクマが2足歩行した時間は、全体の1%に過ぎなかったという。
さらに「遺跡A」において、クマが4本足で歩いた足跡が見つからなかったことを踏まえ、クマが足跡をつけた可能性は低いと結論付けた。
人類学准教授で、今回の研究論文の上級著者であるJeremy DeSilva氏は、次のように述べている。
「クマが歩く時は、前後にふらふらしながら非常に大きなステップを踏みます。股関節の筋肉や膝の形状から、そのような動きやバランスをとることができないため、A遺跡の足跡と同じような歩き方はできません」
また興味深いことに「A遺跡」の足跡は、人類が片方の足を交差させて歩いていた痕跡が残されており、研究者は水平ではない場所を歩き、バランスをとるためにこのような歩き方になったのではないか、と考えている。(了)
出典元:Dartmouth:Mysterious Footprints in Tanzania Made by Early Humans, Not Bears(12/1)