遺伝子編集されたトマトが、間もなくイギリスで販売される予定
イギリスで遺伝子(ゲノム)編集されたトマトが開発され、イングランドで間もなく販売されることになりそうだ。
遺伝子編集作物の法案を提出予定
このトマトを作り出したのは、イングランドの町、ノーリッチにある「ジョン・イネス・センター」の研究者だ。
彼らは遺伝コードの中の特定の分子をオフ(切り取る、外す)することによって、遺伝子編集されたトマトを作り出したという。
そして5月25日には、イングランドで遺伝子編集作物の商業栽培を許可する法案が提出される予定となっている。
EU離脱で独自の規則が可能に
実は、現時点でイギリスではEUが定めた規則のため、この遺伝子編集技術で作られた食品の生産は行われていない。
しかしブレグジット(イギリスのEU離脱)により、イギリスは独自の規則を定めることができるようになったという。
そもそもイギリスでは6人に1人が、ビタミンDが不足していると言われている。ビタミンDは、強い骨や筋肉に不可欠で、がんのリスク軽減にも役立ち、トマトにも豊富に含まれているそうだ。
「ジョン・イネス・センター」でこの研究を主導したキャッシー・マーティン教授は、次のように述べている。
「人間の場合、毎日30分日光に当たれば十分なビタミンDが生成されますが、多くの人は外でそのような時間を過ごすことができないため、サプリメントが必要なのです。トマトそのものが、食生活における別のビタミンD供給源になり得るのです」
遺伝子組み換えとは異なる技術
遺伝子編集は比較的最近の技術で、植物のDNAの一部を切り取って、遺伝子をオン・オフさせるという。
一方、遺伝子組換えという古い技術は、遺伝子を組み込むというもので、全く別の種からの遺伝子を組み込む場合も含まれている。
EUの規制により、どちらの方法もヨーロッパでは約25年前から事実上禁止されてきた。
ただイギリス政府は、遺伝子編集の作物は安全であると判断し、商業的開発を可能にする法案を5月25日に提出する予定となっている。
もしこの法案が無事に議会を通過すれば、トマトは、イギリスのスーパーの棚に並ぶことが許される最初の遺伝子編集作物の1つになるという。
実は日本でも昨年9月から、ゲノム編集技術で誕生したトマトの販売が始められている。(了)
出典元:BBC:Gene-edited tomatoes could soon be sold in England(5/23)
参考:NHK:「ゲノム編集」で品種改良のトマト 一般への販売開始 国内初(2021/9/15)