2人の癌患者に対する両肺移植の手術に成功【アメリカ】
アメリカで、2人の癌患者に対して両方の肺の移植手術が行われ、いずれも成功したと報告されている。
化学療法でも治療ができず、悪化の一途
最初の患者とは、イリノイ州シカゴ出身の男性、アルバート・クーリさん。彼は2021年に同州にあるノースウェスタン大学医学部に来院。
クーリさんはステージ4の肺癌と診断され、化学療法でも治療ができず、悪化の一途をたどり、最終的には集中治療室に入ることになったという。
そこでノースウェスタン医学部の主治医である腫瘍学者のYoung Chae博士は、両肺移植が患者の唯一の希望であり、移植をしなければ患者は生きられないと判断。
2021年9月25日に両肺移植の手術を行い、成功させた。
その1年後、ミネソタ州に住んでいたアメリさんもステージ4の肺がんと診断され、化学療法を試したが、効果が十分ではなかったという。
やがて家族は、ノースウェスタン医学部の外科医に予約を入れ、アメリさんは移植手術の候補者となり、2022年7月に両肺移植を受け、成功したそうだ。
癌細胞が肺から他の部位に広がるリスク
実は、肺癌に対する肺移植は一般的ではないという。
その理由について、ノースウェスタン大学医学部・胸部外科主任のAnkit Bharat医師によれば、手術中に癌細胞が肺から他の部位に広がるリスクが高く、癌が再発する可能性が高いからだという。
実際、患者が両方の肺を交換する必要がある場合、通常、肺は1つずつ取り除かれるが、癌のある肺がまだ体内にある状態で最初の肺を移植すると、癌がその肺から体の他の部分に広がる危険性があるそうだ。
このため手術中に血液が癌の中を流れないようにし、癌が広がるリスクを少なくする必要があるという。
そこでノースウェスタン大学医学部の外科チームは、患者がバイパス装置につながれている間に、癌のある肺を体から取り除く方法を考案。これにより心臓と肺から、血液を遠ざけることができたそうだ。Bharat医師は次のように述べている。
「これらの患者は肺の中に何十億もの癌細胞を持っている可能性があるので、1つの細胞も患者の胸腔や血流に流出させないよう、極めて細心の注意を払う必要があります」
肺癌の治療は、癌がどの程度広がっているかにより、標的薬、化学療法、放射線、または腫瘍を取り除く手術で治療されるが、肺移植が唯一の選択肢となる患者もいるという。(了)
出典元:ABC News:Double lung transplants successfully treat late-stage lung cancer, in a first with new technique(3/17)