平昌オリンピックの裏で犬肉が食べられているとして世界が注目
韓国では現在平昌オリンピックが開催されているが、その裏で同国には犬を食肉として用いる文化が存在する。オリンピック開催地の平昌にも犬肉料理を提供する飲食店は今も存続し、国際社会が注目している。
犬肉料理の追放に本腰を入れる韓国政府
朝鮮半島の伝統料理、「ポシンタン」。栄養豊富とされ韓国でも古くより食されてきたポシンタンは、一方では犬肉を使用しているとして、海外から厳しい目が向けられてきた。
そんな国外からの目を意識し、韓国政府は1988年のソウルオリンピックを機に、都市部の一部で犬肉の販売や犬肉を使用した料理の提供を制限。
以来犬を食べるという文化は韓国の都市部では衰えつつあり、“タブー”とみなされる向きも強くなってきているという。
さらに海外から多くの観光客が訪れる平昌オリンピックを前に、韓国政府は飲食店に対し、メニューや表示などから犬肉に言及するものをなくし、その提供も止めることで200万ウォン、日本円にして約19万9000円を支給すると発表。
本格的に犬肉を食す文化の追放に注力してきた。
これについて平昌群の当局者Lee Yong Jae氏はNBC Newsの取材に「韓国政府は、観光客が犬食によって気分を害することを望んでいない」という。
In Pyeongchang, South Korea, a handful of dog meat restaurants will not stop serving traditional dish https://t.co/3jYld8FPBV pic.twitter.com/NiOQT8slTP
— Newsweek (@Newsweek) February 9, 2018
カンヌンにも存在する犬肉料理店
その一方、犬肉を提供する飲食店は、オリンピック期間中に国内外から訪れる人が利用する高速鉄道の停止駅、カンヌン駅から徒歩圏内にも存在しているという。
そんな店の一つを経営する女性は、近隣で補助金を受け取り犬肉の代わりに山羊肉の提供をはじめた飲食店の存在を耳にしたことがあるとしつつも、自身は韓国政府の補助金について“うわさ”程度にしか知らないとする。
またたとえ補助金について知っていたとしても、犬肉料理の提供を辞めるつもりはないと断言。
両親お手製のポシンタンを食べていた子供時代から犬肉料理を提供する飲食店をオープンさせるのが夢であったといい、自らが経営する飲食店は誇りであるという。
「牛だって屠殺場に行く際には泣いている。犬肉を食べることをなぜそんなに嫌うのか?」
またLee氏は韓国政府から補助金を受け取ったにも関わらず、客足が途絶えたため犬肉料理の提供を再開した飲食店もある、と指摘する。
いまだ根強く残る犬肉を食す文化
Academy of Korean Studiesの教授で韓国の文化人類学に詳しいJoo Young Ha氏いわく、韓国でも昨今は40代以下で犬肉を食べる人は非常に少ないという。
一方、地方の高齢者の間ではいまだに犬肉を食す文化が根強く残ることも指摘。
それだけではなく、1988年に韓国政府が都市部で犬肉の販売等を制限させたことにより、一部の韓国国民の間で自国文化を思う気持ちに火が点き、新たに犬肉を食べるようになった人までいるという。
しかしそれでも1990年代には犬を愛玩動物として扱う向きが強くなり、現在では韓国に存在する犬の多くは食用ではなくペットとして飼われているそうだ。
カンヌンで犬肉を提供する飲食店の経営者は、「カンヌンの者全てが我々の存在を知ってはいるが、客はそれほど多くない」と言い、客の全ては中高年層か高齢者層であるとする。
一方、韓国では例年7~8月の間の「伏日(ボクナル)」という日に犬肉を使用したポシンタンを食べる風習があり、国内で消費される年間約200万匹のうち、半数にあたる100万匹ほどがこの日に消費されるという。
食用犬を救う動物愛護団体の運動も
韓国では、これまでにも外国人が多く訪れる国際的なイベントが開催される際に犬肉を食す文化が問題視されてきた。
In reality, dog meat is illegal in Korea (it was banned around the 1988 Seoul Olympics) and a tiny percentage of people eat it regularly. pic.twitter.com/GKIE27Bire
— Kelly Kasulis (@KasulisK) February 9, 2018
平昌オリンピックの開催期間中にも、動物が屠殺や虐待などといった苦しい思いをすることがないようにと作られた、“クルエルティ―・フリー”製品の普及を目指す団体Humane Society Internationalと動物愛護団体Korean Animal Rights Associationは、韓国における犬肉販売の残酷さを啓発するためのキャンペーンを開催。
Seoul City Hallの外にトラックを設置し、犬肉工場の内部を疑似体験できる展示を行っているという。
さらに米国の動物愛護団体の中には、金銭と引き換えに韓国の食用犬農場から犬を米国へと連れ帰り、ペットとして引き取りたい人に引き渡す運動を行っている団体も存在する。
韓国の伝統文化といえど、他国ではペットとして愛される犬たちが食用に殺されてしまうのを目にするのは切ない。
オリンピックを機に集まった関心が途切れることなく続き、食用として殺される犬たちが少しでも減ることを願うばかりだ。(了)
出典元:NBCNews.com:Olympic crackdown on dog meat fails to banish it from menus(2/13)
出典元:Korea Biomedical Review:Winter Olympic Games stirs up dog meat controversy again(2/11)
出典元:Tsunayoshi:中国よりもヤバい?韓国の犬肉農場と動物愛護団体の交換システムとは(2016/7/11)