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寿命が200年に及ぶメバルの仲間、原因となる遺伝子変異を特定

寿命が200年に及ぶメバルの仲間、原因となる遺伝子変異を特定
flickr_NOAA Photo Library

信じられないほど長生きする魚の長寿の秘密を探る研究が行われ、その結果が発表された。

 

88種類の「メバル」のゲノムを比較

 

その研究を行ったのはアメリカ、カリフォルニア大学バークレー校の生物学者たちだ。

 

彼らはメバル(Rockfish)の仲間、88種類から組織を採取。パックビオ(SMRT)シーケンスと呼ばれる最新の技術を用いて、「メバル(カサゴ目)」の全ゲノムの塩基配列を決定したという。

 

その上で、それらのゲノム(遺伝子配列)を比較、調査した結果、長寿に関連するさまざまな遺伝子を発見。寿命が大きく異なる原因となる遺伝子の違いを明らかにした。

 

日本近海のメバルの仲間、寿命が200年以上

 

そもそも「メバル」の間でも寿命はさまざまで、例えば「カラコ・ロックフィッシュ(Sebastes dallii)」と呼ばれるメバルの仲間は、10年ほどしか生きられないという。

 

一方、「ラージアイ・ロックフィッシュ(Sebastes aleutianus)」と呼ばれるメバルの仲間は、寿命がなんと200年以上もあることが明らかとなった。

 

この「ラージアイ・ロックフィッシュ」という魚は、日本からアリューシャン列島にかけて、冷たく深い沿岸水域の海底に生息していると言われている。

 

通常、体の大きな動物ほど寿命が長いと言われるが、「メバル」の中にも、水深が深くなったり、体が大きくなったりして、寿命が延びることに適応したものも含まれていたという。

 

体の大きさと寿命に関連あり

 

今回、研究チームは、長寿の魚に多く見られるDNAの変異を調べ、137の長寿関連遺伝子変異を発見した。

 

もっとも137の長寿関連遺伝子変異のすべてが、寿命に直接影響を与えるわけではない。例えば、メバルがより深い水深に適応し、より大きく成長することを可能にした遺伝子変異は、それ自体が寿命を延ばすという副次的な効果がある。

 

このため、それらの遺伝子変異を除いた残りの長寿に関する変異では、主に3種類の遺伝子に関連していたという。

 

DNA・インスリン、免疫系の変異

 

それは「DNAを修復する遺伝子の数の増やす変異」「インスリンを調節する多くの遺伝子の変異」、そして「免疫系を調節する遺伝子を増やす変異」だ。

 

DNA修復遺伝子が多ければ、がんを防ぐことができ、免疫遺伝子が多ければ、がんだけでなく感染症も防ぐことができると考えられている。

 

しかもメバルの中には、より深くて冷たい水域に適応し、サイズを大きくすることで寿命を延ばしている種がいたが、最も長寿の種は、DNA修復、インスリン調節、免疫調節などの遺伝子に手を加えることで、さらに寿命を延ばしていたことが明らかになったという。

 

また研究論文の上級著者である、カリフォルニア大学バークレー校のPeter Sudmant助教授は、長寿の種は短命の種に比べて、免疫調整遺伝子、特にブティロフィリン(butyrophilins)と呼ばれるグループが多いことも発見したそうだ。

 

免疫系は炎症の制御に関与しており、ヒトの老化には炎症の増加が関与していると考えられているため、今回の発見は、加齢に伴う体内の損傷を遅らせるための治療薬の標的となりうる可能性もあると考えられている。(了)

 

 

出典元: Berkeley News:Pacific rockfish and the trade-offs of a longer life(11/11)

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