シリアでイスラム教からキリスト教に改宗する人が続々、背景に何があるのか?
イスラム過激派組織「イスラム国(ISIS)」の支配から解放された後の今も、イスラム国の過酷な統治はシリアに暮らす多くの人に深い傷を残したままだ。
そんなシリアでイスラム教からキリスト教への改宗を行う人が続々と現れている状況を、NBC Newsが伝えている。一体何が起こっているのか。
イスラム教徒を惹き付けるキリスト教の教会
トルコと国境を接し、クルド人の拠点として知られるシリアの一都市、コバニ。
一時はイスラム国の支配下に置かれていた同都市が解放されてから、既に4年の月日が流れているが、イスラム国による過酷な支配はコバニに住むイスラム教徒の人々の忠誠心を揺るがせるという、思わぬ影響を残している。
コバニに昨年9月に新たに建設されたキリスト教の教会が、イスラム教徒の人々を惹き付けているというのだ。
キリスト教の数ある教派の中でも、徹底した平和主義と非戦を掲げるブレザレン派に属する同教会は、コバニにおいては数十年の間で初のキリスト教の教会になるという。
Friday mass in #Kobani church. Religious freedom thrives in the north and west of #syria. Even conversion to Christianity no problem pic.twitter.com/RUCWi5ffHY
— Wladimir (@vvanwilgenburg) December 7, 2018
「もしイスラム国がイスラム教を代表するものであるならば、もうイスラム教徒でありたくはありません」
こう語るのは、コバニの新たな教会に通うFarhad Jasimさん(23)。
「彼らの神は私の神ではありません」
タブー視されつつも理解が広がるキリスト教への改宗
シリアにおいてイスラム教からの改宗は本来非常に稀なことで、かつタブー視されており、それでも改宗を行った場合には家族や社会から追放されてしまうことも度々だ。
アラブの春が起こる前のシリア政権下においても、イスラム教からキリスト教への改宗、あるいはその逆の行為は厳しく禁じられていたという。
プロテスタント教会の教区管理者を務めるOmarさん(38)は、「イスラム国支配下での改宗は、想像すらできません。(もし改宗を行えば)イスラム国は即座に殺すでしょう」と話す。
War with Isis: The struggle to rebuild life in Kobani as fighting… http://t.co/jty9vrFCP1 #Church #Blog #Post pic.twitter.com/3RcXA7loy0
— CHURCH DAILY NEWS (@Church4u2) February 1, 2015
一方、Omarさんによると、イスラム国が去った後のコバニでは、キリスト教に対する理解が広まりつつあるようだ。
「ここでは多くの信者が、イスラム国が彼らや彼らの家族に対して行ったことの結果により、改宗を行ったり、教会に足を運んだりするようになりました」というOmarさん。
「改宗を迫られる者はいません。我々の武器は祈りと愛の精神を広めること、そして兄弟愛と寛容なのです」
それでもシリアにおけるキリスト教徒は、まだまだ少数派だ。
シリアにおけるキリスト教信者の割合はわずか4.6%とみられており、さらに2011年のシリア内戦勃発以降、70万人ものキリスト教徒が国を去っていると見積もられている。
この70万人という数のキリスト教徒の逃亡は、シリアにおけるキリスト教の人口を約半分にまで減少させることになったという。
イスラム国に捕らえられ、イスラム教に疑問抱く
しかしイスラム国支配からの解放以降、Farhadさんのようにキリスト教への関心を高める者は後を絶たない。
機械工として働くJasimさんも、そんな中の一人だ。
昨年キリスト教へと改宗したというJasimさんは、2016年初頭から半年間にわたり、イスラム国により囚われの身となる。その理由はJasimさんが、イスラム教に関する基本的な知識を知らなかったため。
捕らえられたJasimさんは拷問を受けると共に、イスラム教の聖典であるコーランを無理やり読まされたという。
Jasimさんは怒りを込めた口調で、「自分の目で彼らの残虐性を目撃した後、自分の信仰に疑問を抱き始めました」と語る。
そしてコバニに新たなキリスト教の教会が誕生したことを知ったJasimさんは、キリスト教とは何たるものかを知るため、自らの足で教会を訪れることを決意する。
「キリスト教は私が探し求めていた宗教であるということに気付くのに、時間はかかりませんでした」
Parish leaders have opened a new church in Kobani, a city that became an icon for the resistance against the Islamic State in 2014. #TwitterKurds #ISIS #Syria https://t.co/ChJaVWUuxw pic.twitter.com/XnqqwabvEO
— Kurdistan 24 English (@K24English) September 15, 2018
その一方、イスラム教からキリスト教への改宗は、彼の両親や家族との関係の終わりをも意味する。
それでもJasimさんは自身が愛する人々が彼のキリスト教への改宗をいつか許すと共に、彼ら自身もキリスト教への改宗を検討することを願っているという。
2014年には100人以上ものイスラム教学者が協力して、イスラム国指導者アブー・バクル・アル=バグダーディー宛てに、「戦闘員のグループはイスラム教を、激しく残酷で、拷問と殺人を行う宗教であると誤解している」と訴える公開書簡を送っている。
しかしイスラム国支配下での経験により、一度失われたイスラム教への信仰心を人々に再び取り戻させることは容易ではなさそうだ。(了)
出典:NBCNews.com:Life under ISIS led these Muslims to Christianity(2/3)