【インドネシア】外に出たらお化けが?外出自粛徹底の取り組みが独特過ぎる
新型コロナウイルス感染拡大にあたり、日本でも全国を対象に緊急事態宣言が発令された。政府や自治体は外出自粛の徹底を促しているが、それでも外出してしまう人はあとを絶たない。
そのような状況は国外も同様で、各国は外出制限下やロックダウン下にあっても不要な外出をしてしまう人の存在に頭を悩ませている。
そんな中、外出自粛を促すためインドネシアの地元当局が独特過ぎる試みを実施し、注目を集めている。
突如として現れ姿を消す人影…その正体とは
インドネシア中部ジャワ州スコハルジョ県に位置するケプ村では、昨今幽霊の目撃情報が相次ぐ。
全身真っ白な姿の人影が道行く人の前に突如として現れ、月明かりの下で姿を消していく――。
といってもこれはもちろん本物の幽霊などではない。
ケプ村では、4月初頭より幽霊に扮したボランティアを雇い、数日おきにパトロールさせているのだ。
その目的は新型コロナウイルス感染が国内で広がる中、人々を自宅に留まらせておくためだ。
しかしなぜ幽霊なのか。
インドネシアにおいては“ポチョン”と呼ばれ、成仏できず墓地を彷徨う死者の魂の存在が信じられている。
その姿は化粧をほどこしたような顔をし、亡くなった人が着る白装束に身を包み、その頭と足の部分に結び目のようなものがある、とされる。
ケプ村に現れる“幽霊”とは、これを模したものとなっているのだ。
“幽霊”効果のほどは一体?
それではこの“幽霊効果”とはいかほどなのだろうか。
実はパトロールを始めた当初、“幽霊”は人々を自宅に留まらせるのとは全く逆の効果をもたらしてしまったという。
というのもこのケプ村の“幽霊”の存在についてはソーシャルメディア上でも話題になり、その姿を一目見ようと多くの人が訪れるようになってしまったのだ。
これを受け、企画者らは作戦を変更。
ボランティアを雇い、抜き打ちでパトロールを行うようになったところ、効果が表れ始めたという。
ケプ村地元住民のKarno Supadmoさんは、これについて「ポチョンが現れるようになって以来、親子が自宅を離れなくなくなりました」と証言する。
「それに人々は晩の祈りの後、集まったり通りにたむろしたりしなくなりました」
Pocong go international pic.twitter.com/aV1YKoIFzU
— Paman Bajay (@jayakabajay) April 14, 2020
さらに地元モスクの管理人を務めるAnjar Pancaさんは、“幽霊”の役割について単に住人を怖がらせるためだけのものではなく、新型コロナウイルスが死をもたらすという危険性について啓発するための意味合いをも持つと説明する。
「人々は通常死と関連するものに、より注意を払うため、それはショック療法になるのです」
Pancaさんによると、過去3日間で夜間に外出していた人はいなかったという。
「明らかに彼らは偽物の幽霊を恐れているんです」
一方ケプ村の村長Priyadi氏は、「どのようにして新型コロナウイルスへの感染を抑制するのかということについて、住民は未だに意識が欠如している」との危機感を訴える。
「住民は普通の暮らしを送りたがっており、彼らにとって自宅待機の指示に従うということは非常に難しいことだ」
pls include POCONG from Indonesia pic.twitter.com/fZXFQv1Q5f
— co2nutgalileo (@co2nutgalileo) April 13, 2020
インドネシア全体での新型コロナウイルス感染者数は既に5000人を超えている一方、同国では国内全体でのロックダウンは未だ行われていない。
これに対してケプ村のような地元自治体の間では、ロックダウンや外出制限などの措置が行われており、同国の新型コロナウイルス感染拡大防止への試みはまだ手探りのようだ。
偽物の“幽霊”によって外出自粛を促すという斬新すぎる手法まで飛び出す中、世界4位という巨大な人口を抱えるインドネシアがどのようにして新型コロナウイルスの感染を抑止できるのか、注視していきたいところだ。(了)
出典:Reuters:‘Ghosts’ scare Indonesians indoors and away from Coronavirus(4/13)
出典:CNN:‘Ghosts’ try to spook people off streets during coronavirus in Indonesia(4/14)
出典:Jakarta Post:‘Pocong’ out to keep residents in(4/2)
出典:日本経済新聞:インドネシアのコロナ感染、最大10万人超も 政府予測(4/16)