浅草のなじみの光景が消滅の危機。伝法院通り32店舗に台東区が立ち退きを通知
浅草の雷門から浅草寺まで延びる仲見世通り。その仲見世通りから浅草公会堂に向かう途中には、小さくて個性的な店が並んでいる。その風景を作っているのが伝法院通り商栄会だ。
▼緊急事態宣言中につき、ほとんどの店舗が5月31日まで休業中
戦後から浅草の風景を作ってきたこの小さな店舗群が、消滅の危機に直面している。
台東区から送られてきた内容証明郵便
2020年5月、伝法院通り商栄会の各店舗に、台東区の代理人弁護士から内容証明郵便が届いたという。その内容は、伝法院通り商栄会の32店舗が不法占拠であるため、2021年6月30日までに建物を撤去するように求めるものだ。
伝法院通り商栄会側も弁護士を立て、台東区との話し合いを区の代理人に求めたが、「代理人を通してしか話はできない」「立ち退くことを前提にした話しかできない」と伝えられたという。
台東区議会でのやりとり
台東区の代理人から伝えられた内容としてはもう1点、「議会で明け渡し訴訟を提起するための承諾を得ており、裁判を起こす予定で、裁判では土地の使用料も請求する」といったものがある。
台東区議会事務局に確認をすると、該当するのは令和3年3月2日の産業建設委員会でのやりとりとのこと。
▼該当部分は1時間35分ごろから
それによると令和2年9月に、台東区の代理人弁護士が東京地方裁判所に占有移転禁止の仮処分を申請しており、32店舗すべてに執行されていると記録されている。台東区の代理人から伝えられたという、「裁判では土地の使用料も請求する」に該当する内容は確認できなかった。
また、令和元2年12月11日の産業建設委員会では、伝法院通りの該当店舗群が道路の不法占拠であること、違反建築であることが話し合われている。この時点ですでに和解が成立した店舗もあり、その店舗は令和3年5月11日時点ですでに撤去されている。
バリケードが置かれている箇所が、すでに和解した店舗のあった場所。伝法院通り商栄会には所属していない店舗だった
伝法院通りには、観光客からの人気が高い台湾からあげの「浅草安心や」や「浅草メンチ」もあるが、両店舗は不法占拠店に該当していない。そのため、32店舗が無くなった場所に、食べ歩きの観光客が集まってしまうのではないかと危惧する声があげられている。
不法占拠との認識はなく
伝法院通り商栄会が4月9日付で作成した「ご署名のお願い」によると、該当店舗群は戦後直後から営業を開始しており、昭和52年に浅草公会堂が新築された後には、当時の内山榮一区長の指示により、バラック店舗を取り壊して現在の店舗を建築したとのこと。
こうした歴史から、伝法院通り商栄会では不法占拠であるという認識はなかったという。筆者も浅草に長く住んでいるが、この店舗群が不法占拠であるという話は聞いたことがなく、仲見世と同様に浅草寺に家賃を払っているものだと思っていた。
「ご署名のお願い」によると、「これまで区との間でも、私たちの営業等が問題にされたこともありませんでした」とのこと。令和3年3月2日の産業建設委員会でも、店舗の撤去に関するやり取りが伝法院通り商栄会となされたのは、平成26年6月だとされている。また、令和元年12月11日の産業建設委員会でも、今まで指導が行われていなかったことが記載されている。
伝法院通り商栄会では、存続を訴える署名活動を実施中。オンラインでは受け付けておらず、開店している一部店舗にて受け付けている。
参考:台東区議会事務局「令和 元年12月産業建設委員会-12月11日-01号」