絵本『はらぺこあおむし』の作者・エリック・カール氏が死去、作品に込めたメッセージとは?
絵本作家のエリック・カールさんが今週の初め、亡くなった。91歳だった。
世界中で愛され続けている絵本
カールさんの家族は5月26日、彼が5月23日に亡くなったと発表。家族に見守られながら、安らかに息を引き取ったと明らかにした。
カールさんは、これまで70冊以上の子供向け絵本のイラストを描き、デザインを行ってきたという。それらの絵本はこれまでに1億7000万冊も販売されたと言われている。
そんな彼の作品の中で最も人気が高いのが、『はらぺこいもむし(The Very Hungry Caterpillar)』だ。この作品は1969年に出版され、世界中で愛され続け、日本でも多くの人々が幼い頃に手にしたのではないだろうか。
また2020年には最も販売された絵本のNo1にも選ばれているそうだ。
幼い頃にドイツへ渡る
カールさんは、1929年6月25日、ニューヨークの街、シラキュースでドイツ系移民の子供として誕生。6歳の時、父親のErich Carleさんと母親のJohannaさんとともに、出身地であるドイツのシュトゥットガルトへ戻ったという。
1950年、彼は有名な美術学校「アカデミー・デア・シュトゥットガルト芸術大学(Academy of Fine Arts)」を卒業し、わずか40ドルと画帳を手に、アメリカ・ニューヨークへ戻ってきたそうだ。
そしてイラストレーターであり、アートディレクターであるLeo Lionnni氏の指導を受け、新聞社「ニューヨーク・タイムズ」で職を得る。
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1967年から絵本作家として活動
しかし朝鮮戦争が勃発した時、カールさんは米陸軍に徴兵され、従軍。除隊後に再び「ニューヨーク・タイムズ」へ戻り、その後医療系広告代理店のアートディレクターに就任したという。
絵本のイラストレーターとしての彼のキャリアは、1967年から始まる。
作家のBill Martin Jrさんが、医療雑誌に掲載されたカールさんの広告の絵を見て、『Brown Bear, Brown Bear, What Do You See?』という本を書くよう勧めたのがきっかけだという。
カールさん自身の最初の絵本『1, 2, 3 to the Zoo』も1967年に出版され、その後『はらぺこあおむし』が出版される。この本は現在、世界70カ国語に翻訳されているそうだ。
「これは希望の本」
カールさんは『はらぺこあおむし』の人気について、2019年にペンギン社の記念動画において、次のように語っていたという。
「これは希望の本だと思います。子供には希望が必要です。取るに足らないあおむしも、成長し、美しい蝶になることができます。そして自らの才能を携え、世界に羽ばたくことができるのです。そんなことが自分にできるのか?ええ、できます。これがこの本の訴えたいことだと思います」
多面的なアーティストとしてカールさんの仕事は、絵本に留まらず、絵画、彫刻、演劇、さらには家具のデザインなど、さまざまな芸術媒体も手がけていたという。
家族は「カールさんが最後までアーティストだったとし、死ぬまで働き続けた」と語っている。(了)
※NHKのサイトでもカールさんの戦争当時の体験のことが紹介されている。是非、そちらもご覧いただきたい。
出典元:GMA:Eric Carle, author of ‘The Very Hungry Caterpillar,’ dies at 91(5/26)