子宮を移植されたオスのマウスが10匹の子供を出産、中国での研究に批判も
中国の科学者が、オスのマウスを妊娠させて、子供を産む実験を行い、その結果を報告している。
メスとオスを外科的に結合させる
この実験を行ったのは、上海にある「海軍医科大学」を拠点にした研究者たちだ。
彼らはまず、去勢したオスのマウスとメスを外科的に結合させ、血液を共有する46組の「パラビオティックペア(2つの個体が結合した状態)」を作り出したという。
個体を結合させたのは、オスがメスから、妊娠するために必要な血液ホルモンなどの支援を受けるためだと考えられている。
8週間後、オスのマウスに子宮を移植。オスが回復した後に、オスとメス両方の子宮に初期状態の胚、842個を埋め込んだ。メスの子宮には562個、オスには280個の初期胚(受精卵)を移植したそうだ。
成長できた確率は3.68%
そして2週間後、帝王切開してマウスの体から胎児を取りだした。この結果、10匹の健康な子供がオスから誕生。研究者によれば、オスの哺乳類から子供が生まれるのは初めてのことだという。
その後、生まれた子供は代理母によって育てられたが、大人になるまで成長できた確率は3.68%だったそうだ。またオスのマウスに移植された後に死亡した胚のいくつかは、異常に発達していたという。
今回の結果は、子宮を持たないオスに胚を移植して失敗した過去の研究を踏まえたものであり、研究者たちは発表した研究結果(査読されていない)において「オスのパラビオント(結合体)でのマウス胚発生の可能性を明らかにしたものであり、生殖生物学に大きな影響を与える可能性がある」と述べている。
国際動物愛護団体は実験を批判
「パラバイオシス(個体結合)」を行うのはショッキングにも思えるが、科学的な手法としては比較的、よく用いられるという。
また研究者は、実験中の動物の苦痛を軽減するための倫理規定にも従っており、マウスたちも実験中に苦痛をしめすことはなかったと主張している。これは、実験に参加するマウスの数を最小限にし、すべての外科手術を麻酔下で行うことを意味しているそうだ。
しかし国際動物愛護団体「PETA(動物の倫理的扱いを求める人々の会)」のEmily McIvor氏は、次のように述べて批判している。
「2匹の敏感なマウスを外科的に結合させ、身体切除と数週間の長期にわたる苦痛に耐えさせることは非倫理的であり、フランケン・サイエンスの領域に属するものです。マウスは人間と同じ神経系を持っています。人間と同じように痛みや恐怖、孤独や喜びを感じています」(了)
※この研究内容については、「ナゾロジー」が詳しく解説している。そちらも是非、ご覧いただきたい。
出典元:METRO:Male rats give birth – after scientists conjoin them with females(6/18)