被害者は5万人以上か、イスラエルの企業が開発したスパイウェア「ペガサス」とは?
イスラエルの企業が開発したスパイウェアが、多くの人の携帯電話に仕組まれていた可能性があるとして、問題となっている。
テロリストなどを標的にしたもの
そのスパイウェアとは、イスラエルの企業「NSOグループ」が開発した「ペガサス」だ。
これはもともと犯罪者やテロリストを標的に開発されたソフトウェアで、人権面で優れた実績を持つ国の軍や情報機関、法執行機関などでしか使用できなかったものだという。
しかしこれが権威主義的な国家にも販売され、ジャーナリストや人権活動家、弁護士など約5万人の携帯電話に仕組まれていた可能性が浮上している。
5万人分の電話リストのうち、実際に何件の電話がハッキングされたのかは明らかにされていない。またNSO側も不正行為を強く否定している。
カメラやマイクも操作できる
「ペガサス」は「iPhone」や「Android」の携帯端末に感染し、オペレーターがメッセージや写真、電子メールを抜き出したり、通話を録音したりできるという。
また携帯電話に取り付けられているカメラやマイクを、オペレーターが作動させることも可能だと言われている。
このため携帯電話に「ペガサス」を仕組まれた人は、常に会話も盗聴され、行動も監視されることになるそうだ。
各メディアが報じ、現在調査を継続
このスパイウェアの実態が公にされたきっかけは、5万人分の電話リストが大手メディアにリークされたこと。そして7月18日には「ワシントン・ポスト」や「ガーディアン」「ル・モンド」など、世界中の14のメディアが報じた。
もっとも現時点で、このような被害を受けた正確な人数は分かっていない。現在、各メディアも調査しており、50カ国に及ぶ1000人以上の電話番号がリストに含まれていたという。
そのリストの中には政治家や国家元首、企業経営者、人権活動家、そしてアラブの王室メンバーも含まれており、CNN、ニューヨーク・タイムズ、アルジャジーラなど、180人以上のジャーナリストの名前も含まれていたそうだ。
使用が疑われる国は10カ国に集中
「ペガサス」を使っていたと疑われる国は、アゼルバイジャン、バーレーン、ハンガリー、インド、カザフスタン、メキシコ、モロッコ、ルワンダ、サウジアラビア、アラブ首長国連邦など、10カ国に集中していたとか。
ただしこれらの国のスポークスマンは、いずれも「ペガサス」が使われていたことを否定。監視権限を濫用したことも否定している。
「ワシントン・ポスト」によれば調査により、37台の携帯電話にハッキングが「試みられ、成功した」ことが判明したという。しかもその中には、トルコのサウジアラビア領事館を訪問中に殺害されたジャーナリストのジャマル・カショギ氏の妻を含む、彼に近い人々も含まれていたそうだ。
仏紙「ル・モンド」によれば、フランスのマクロン大統領の携帯電話も、モロッコにより「ペガサス」のターゲットになっていた可能性が浮上しているという。(了)
出典元:BBC:Pegasus: Spyware sold to governments ‘targets activists’(7/19)