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貴重な恐竜化石、わずか6分間の競りで47億円に。“幽霊化”回避なるか

貴重な恐竜化石、わずか6分間の競りで47億円に。“幽霊化”回避なるか
Sothbys

約1億5400万〜1億5900万年前に地球を歩いていた貴重な恐竜の化石が、3050万ドル(約47億円)という破格で落札された。入札時間はわずか6分、予想額を大幅に上回る結果となり、人々の注目を集めている。

 

世界でも類を見ない貴重な化石

 

今回、高額で落札されたのは、1996年にワイオミング州で発見された肉食恐竜「ケラトサウルス(Ceratosaurus)」の化石だ。

 

まだ若い個体とされるが、高さ約1.90m、長さ約3.25mという迫力だ。139点の骨がオリジナルで、一部は復元部品で補われている。中でも、鼻の上に1つ、目の上に2つの突起をもつ特徴的な頭骨は、ほぼ完全にオリジナルの骨で構成されており、上下顎の歯列も揃っている。

 

Sothbys

 

2000年からユタ州の「古代生命博物館(Museum of Ancient Life)」で未修復のまま保管されてきたが、2024年に専門業者が取得し、展示用に修復された。現存する若年個体のケラトサウルスの化石は、世界でも他に例がないとされており、科学的価値も極めて高い。

 

6分間で予想値を大幅に更新

 

入札は6人が参加する6分間の激戦だった。事前予想は400万〜600万ドル(約5.9億円~約8.9億円)だったが、最終的に2600万ドル(約38.4億円)で落札され、手数料込みで3050万ドル(約47億円)となった。この金額は、オークションで落札された恐竜としては史上3番目の高額だ。

 

ちなみに1位は、昨年4460万ドル(約65.9億円)で、ヘッジファンドの億万長者ケン・グリフィン氏によって落札された、“Apex”と名付けられたステゴサウルスの完全な骨格だ。

 

化石の私有化を不安視する声

 

最近では、美術品の既存コレクターだけでなく、30〜40代の科学・IT業界の専門職などが化石市場に関心を寄せている。骨の断片など比較的安価な標本も流通しており、「恐竜の化石が買えるなんて知らなかった」と驚く声も少なくない。

 

今回の落札者は非公表だが、標本を研究機関に貸与する意向を示している。また、Apexもニューヨークのアメリカ自然史博物館に長期貸与され、研究・展示されている。

 

一方で、恐竜化石が個人の邸宅に飾られ、研究機関の手を離れてしまうことを懸念する声も多い。エディンバラ大学の古生物学者であるスティーブ・ブルサット氏は「コレクターがそれを邸宅に飾ってしまえば、化石は“消えた幽霊”になる」と警鐘を鳴らす。

 

さらに、専門家たちはアメリカ西部の先住民の土地から化石が持ち出されており、化石取引が違法な発掘や輸出を助長しているという声もある。

 

なにかと問題の多い“化石の高額取引”。今回のケラトサウルスの化石が、幽霊とならずに未来の科学と教育のために生かされることを願うばかりだ。(了)

 

参考:Sothbys「Ceratosaurus

参考:Phys「Largest piece of Mars on Earth fetches $5.3 million at auction, but young dinosaur steals the show」(7/16)

参考:Artnet「How Dinosaur Bones Became Billionaires’ Collectibles」(8/5)

参考:福井県立恐竜博物館「ケラトサウルス・ナシコルニス

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