中国で上野千鶴子教授の本が絶大な人気を博す、フェミニズムに女性が共鳴
中国では、政府がフェミニズム運動を抑え込んでいるが、そんな中でも、東京大学の社会学教授である上野千鶴子さんの本が、多くの人々に読まれているという。
中国で100万冊以上も販売される
イギリス紙「ガーディアン」によれば、本の販売状況を調査する北京オープンブックは、上野教授の本が中国で100万冊以上も販売されたと発表したという。
しかもこのうち、すでに20万冊が1月と2月だけで販売されたそうだ。
またこの2年間で、上野教授の著書は11冊が中国語(簡体字)に翻訳され、今年も4冊が出版される予定となっている。
さらに昨年12月には、彼女の著書2冊が、中国の外国語ノンフィクションベストセラーのトップ20に入ったという。
女性らがフェミニズムを学ぶ機会を探す
中国ではフェミニズム運動が、政府の厳しい検閲などによって抑圧されているが、女性たちは、まだ個人的なレベルではあるものの、フェミニズム思想についてもっと学べる機会を探しているそうだ。
そして中国の若い学者や作家、ポッドキャスターに、女性が読んでいる本について話を聞くと、上野教授の名前がよく出てくるという。
ポッドキャスト「ストキャスティック・ボラティリティ」の司会者で、フェミニストのShiye Fuさんは、次のように語っている。
「私たちは彼女(上野教授)が好きでたまりません。中国では、私たちを導き、女性がどこまで行けるかを教えてくれる、フェミニストのお手本のような存在が必要なのです。彼女は、女性として毎日戦わなければならないこと、そして戦うことは生き残ることだと教えてくれました」
夫を持つことを期待される女性たち
一方、中国での人気について「ガーディアン」の取材を受けた上野教授は、次のように答えている。
「自分のメッセージが、この世代の中国女性に響くのは、十分な資源に恵まれて育ち、より多くの機会を得られると教えられてきた一方で、家父長制と性差別によって、妻や母として女性らしくあることが重荷になっているためだと思います」
上野教授は長年、結婚が女性の自律性を制限すると主張し続けており、その姿勢には、夫を持つことを期待され、それに反発する中国の女性たちが共鳴しているという。
上野教授は2019年、東京大学の入学式で「フェミニズムはけっして女も男のようにふるまいたいとか、弱者が強者になりたいという思想ではありません。フェミニズムは弱者が弱者のままで尊重されることを求める思想です」と語ったが、この時のスピーチは中国でも話題になったそうだ。(了)
出典元:The Guardian:Chizuko Ueno: the Japanese writer stoking China’s feminist underground(4/26)