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重度の麻痺を抱えた女性、脳信号を変換したアバターで話すことに成功

重度の麻痺を抱えた女性、脳信号を変換したアバターで話すことに成功
YouTube/UC San Francisco

重い麻痺を抱え、話すこともできなかった女性が、アバターを通して会話をすることができた。

 

脳の電気信号を表情にも変換

 

これまでの患者の場合、視線追跡や顔の小さな動きで言葉を綴ることでしか、意志を伝えることができなかったという。

 

しかもこの技術では、非常に遅い音声合成装置に頼らざるを得ず、自然な会話は不可能だったとされている。

 

しかし今回、研究者らは、脳の表面に埋め込まれた小さな電極を使って、脳の音声と顔の動きを制御する電気的活動を検出。

 

さらにその信号をデジタル・アバターの発話や、笑顔、しかめっ面、驚きなどの表情に直接変換する技術を使ったという。

 

その結果、重度の麻痺が残る女性患者が、アバターを通して会話をし、表情を作ることもできたそうだ。

 

253個の電極を脳に埋め込む

 

今回、被験者となったのは、アンさん(47)という女性。彼女は18年以上前に脳幹の脳卒中を起こして以来、重度の麻痺状態にあった。

 

このためアンさんは話すこともタイプすることもできず、通常は、1分間に最大14単語でゆっくりと文字を選択できる動作追跡技術を使い、コミュニケーションをとっていたという。

 

そこで研究者は今回、紙のように薄い長方形の形をした253個の電極を、アンさんの脳の表面にある、話すのに重要な領域に埋め込んだという。

 

これらの電極は、脳卒中がなければ舌、顎、喉頭、顔の筋肉を制御していたであろう、脳信号をとらえることに成功した。

 

また埋め込み後、彼女独自の音の脳信号を検出させるため、アンさんはチームと協力してさまざまなフレーズを繰り返すことにより、システムのAIアルゴリズムを訓練させたそうだ。

 

これにより、コンピューターは39の特徴的な音を学習し、Chat GPTスタイルの言語モデルを使用して、信号を理解しやすい文章に翻訳。それを、怪我する前の彼女の声にパーソナライズされた音声を持つアバターを通して、言葉にさせることに成功した。

 

この技術はまだ完璧ではない

 

もっともこの技術はまだ完璧ではなく、500以上のフレーズを含むテストでは28%の確率で、単語を誤って解読してしまったという。

 

また通常、自然な会話で話される単語は110~150語とされているが、この技術では1分間に78語の割合でしかテキストを生成できなかったそうだ。

 

しかし、この研究を率いた、カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)のエドワード・チャン教授は、次のように述べている。

 

「私たちの目標は、私たちが他人と会話する最も自然な方法、つまり完全で身体化されたコミュニケーション方法を回復させることです。これらの進歩により、患者にとって現実的な解決策となることに、私たちを大きく近づけさせたのです」

 

今後。脳卒中や筋萎縮性側索硬化症(ALS)などで話す能力を失った人々の生活が、脳コンピューター・インターフェース(BCI)によって一変する可能性がある、と期待が高まっている。(了)

 

出典元:The Guardian:Paralysed woman able to ‘speak’ through digital avatar in world first(8/23)

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