「癌は神からの贈り物」死の宣告から寄付活動に身を投じた若き資産家が死亡
人間は「死」と対峙した時、何を思い、どう行動するのだろうか。末期癌が判明した後、人生を180度転換させた若き資産家が先月末、死亡した。
それまでに得た財産を投げ出し、残りの余生を恵まれない人々への寄付活動に費やした彼のストーリーが話題となっている。
裕福な資産家を襲った癌
オーストラリア出身のAli Banat氏。彼は5月29日、癌の為亡くなった。享年32歳だった。
Banat氏は裕福な家庭に育ち、自身も会社を経営するなどし、幼い頃から金銭には全く不自由しない生活を送っていたという。
インタビューでは、高級ブランドの時計や宝飾、衣類が所狭しと並んでいる彼の部屋が紹介されている。(動画2:30秒頃から)
しかし2015年、そんな彼の人生が大きく変わる出来事が起こる。Banat氏は癌を発症したのだ。病状は既にステージ4まで進行しており、余命7カ月と告げられた。
死と向き合った末に出した答えとは
自らの死を実感したBanat氏は、これまでコレクションとして購入した所持品の全てに価値を見いだせなくなったという。
6500万円のフェラーリの車を見て、彼はこう語る。
「このような車でドライブすることは、今はもう何も感じなくなりました。」
「これは、今私がしたいことではありません。」
残された時間を何に費やすか、Banat氏がたどり着いた答えが寄付だった。
慈善団体を設立しアフリカで救済活動を行う
そこで彼は、車、宝飾品、衣類など、自身の所持品を全て手放し、恵まれない人々へ寄付することを決意。
イスラム教徒だったBanat氏は、世界の困窮した同胞を助ける為に“Muslims Around The World” (MATW) という慈善団体を立ち上げ、アフリカへと向かったのだ。
MATWの活動を通じ、彼はアフリカにモスクや学校、医療施設等の建設を行った。
「もしあなたたちも病気に罹り、余命があとわずかだと分かったとしたら、これが最後に心からしたいと思うこととなるでしょう。」
「そして、それが私たちの人生を毎日どう過ごすべきなのか、ということなのです。」
「癌は神からの贈り物」
Banat氏はインタビューの中で、「癌は神からの贈り物」だと話している。癌により自分の人生の全てを変えるチャンスを与えてくれたとして、神に感謝しているという。
イスラム教では、自発的な寄付のことを「サダカ」といい、サダカを行うことはイスラム教徒として奨励されている。
日本語では喜捨と言われるサダカだが、元々全ての所有物は神から与えられたものであり、寄付をする時も所有物を神に返す、という考えがある。また、寄付を受け取る側も、神から贈られたものとして捉える。
日本や西洋では、建物や学校などに寄付した人の名前が記されることがよくあるが、イスラム教の社会ではそれがない。サダカはあくまで人間と神との間のやり取りなのである。
Banat氏からの最後のメッセージとは
Banat氏はまた、MATWの設立と同時に、一般の人々からの寄付を募るgofundmeページも立ち上げた。寄付総額は150万ドル(約1億6000万円)を超えており、現在も寄付は続いているという。
当初余命7ヶ月と宣告されつつ、それから約3年間癌と闘い続けたBanat氏だったが、先月32年間の短い生涯を閉じた。
彼が亡くなった後、死の直前に撮られた最後のビデオレターが公開された。
Ali Banat recorded this final mesage to be shared after his death 😢May Allah grant him Paradise.
OnePath Networkさんの投稿 2018年5月31日木曜日
「兄弟姉妹の皆さん、人生において自分が進むべきゴールを、プランを、目標を持つよう努めてください。」
「他人を助ける為に、何か少しでも行動しましょう。」
どう生きるべきか。Banat氏のメッセージが人々の心に響いたであろうか。(了)
出典:THE Sun:‘CANCER WAS A GIFT’ Millionaire dies after giving his fortune away to charity following cancer diagnosis (6/1)
出典:Independent:A Muslim millionaire who gave all his money to charity has passed away from cancer (6/1)