狂犬病の疑いで殺処分が決まった子犬、迎えに来た係員にしっぽを振って近づく
米コロラド州で狂犬病が発生し、悲劇が生まれている。
譲渡会に参加していた子犬が陽性に
8月7日、コロラド州で1匹の子犬が狂犬病陽性となった。11匹の兄弟犬とともに、保護団体が開催した譲渡会に参加していた子犬だ。
コロラド州公衆衛生環境局では、少なくとも 115 人の関係者を検査。そのうちの35 人以上が、病原体が体内に侵入した可能性があるとして医療機関に連携された。
すべての兄弟犬が殺処分へ
ジェシカ・エデンさんが里子に迎えたムスビちゃんは、陽性反応を示した子犬の兄弟だ。
新しい家族ができて2週間、ムスビちゃんはいろいろなことを学び、トイレトレーニングも順調だった。適齢期を迎えて狂犬病の予防接種を翌週に控えたある日、保護団体から兄弟犬が狂犬病陽性だったこと、そして「ムスビちゃんも狂犬病に感染しているかもしれない」との連絡が来たのだ。
犬に対する狂犬病検査は脳組織を取るため、死んでからしか検査ができない。そのため、120日間の隔離か安楽死の選択肢を告げられ、隔離を選んだエデンさん。しかし、その翌日には「ムスビとその兄弟たち全員を安楽死させる」と州の担当者から連絡がきたという。
兄弟犬たちは狂犬病ワクチンを接種しておらず、ワクチン未接種の動物たちへの治療薬はない。厳重な隔離も難しいため、全米州公衆衛生獣医師協会(NASPHV)のガイドラインでは、狂犬病ウィルスに晒された未接種の動物に対して安楽死を推奨しているという。
エデンさんは、子犬を渡さなければ1年の懲役または1000ドルの罰金が科せられる可能性があると告げられた。
係員にしっぽを振って近づいた
エデンさんが思い悩む中、ムスビちゃんが嘔吐。嘔吐は狂犬病の初期症状だと聞いていたエデンさんは、狂犬病を発症して苦しい思いをさせたり、他の人に感染させたりしないためにと安楽死を決断した。
アイキャッチのムスビちゃんは、そんな時に撮影されたものだ。キスをされてうれしそうなムスビちゃんとは対照的に、エデンさんやそのパートナーはとても悲しそうな表情をしている。
安楽死のために迎えに来た係員に、ムスビちゃんはしっぽを振って近づいたという。
最期の瞬間まで家族に愛され、ヒトを愛したムスビちゃん。安楽死後の検査の結果、狂犬病は陰性だったことが分かっている。(了)
参考:CBS「Colorado health officials warn adopters after puppies found with rabies — family devastated」(8/12)
参考:CBS「Euthanized puppy tests negative for rabies following health warning after Colorado adoption event」(8/13)
参考:Colorado Sun「No human cases of rabies so far as second puppy from Colorado adoption event tests positive」(8/15)