バイデン大統領 vs. イーロン·マスク、米経済に関する発言がエスカレートして火花散る
世界的な大富豪であり、電気自動車メーカーの「テスラ」や宇宙開発企業「スペースX」を率いるイーロン・マスク氏と、バイデン大統領が、言葉のパンチを出し合っている。
事の発端は、ロイター通信がすっぱ抜いたマスク氏のメールの内容だった。
今後の経済に「超悪い予感」
マスク氏は、テスラ社の重役に宛てたメールで、今後の新規採用の停止と人員の10%削減を考えていると伝えた。その理由は、今のアメリカ経済を見ていると「超悪い予感(super bad feeling)」がする、ということだった。
これに敏感に反応したのが、景気・物価対策の甘さで批判を浴びているバイデン大統領だ。6月4日の記者会見で、マスク氏の「超悪い予感」についてどう思うかと記者から問われ、大統領は待ってましたとばかりメモを取り出し、こう反撃した。
「イーロン・マスクがそう言っている間に、フォード(自動車メーカー)は、新しい電気自動車を作るために投資を大幅に増やしている。(合衆国)中西部で、6000人を新規雇用している。旧クライスラー社である(自動車メーカー)ステランティス社も、電気自動車に同様の投資をしている」
“Lots of luck on his trip to the moon.”
— President Biden responds to Elon Musk saying he has a “super bad feeling” about the economy pic.twitter.com/RNjXcP1Szn
— The Recount (@therecount) June 3, 2022
どうやらバイデン大統領は、他社は「超悪い予感」など感じておらず、今経営規模を縮小するマスク氏は間違っている、と言いたいようだ。
さらに大統領は、マスク氏のスペースX社が進めている月旅行計画にクギを刺す。
「……だからつまり、彼の月旅行にたくさんの幸運があることを願うね(Lots of luck on his trip to the moon)」
Lots of Luck という英語は、皮肉で使われることが多い。たくさんの幸運が重ならないと実現不可能、というネガティブな意味合いもある。バイデン大統領はなぜこんなことを言ったのか? それにはちょっとした裏がある。
NASAから巨額出資を受けるスペースX社
スペースX社の月旅行計画は、政府機関であるNASA(アメリカ航空宇宙局)からの巨額の資金援助によって進められている。メディアによれば、その額はおおよそ29億ドル(約3794億円)。
バイデン大統領の「Lot of Luck」には、その事実を思い出させる目的もあったのだろう。ストレートな言い方なら、「スペースX社がやっていけてるのは誰のおかげだと思っている!」となりそうだ。
マスク氏は、援助金をとめられては大変、とでも思ったのだろ、ツイッターでさっそく対応し、「Thanks Mr.プレジデント!」と謝意を表した。
Thanks Mr President!https://t.co/dCcTQLsJTp
— Elon Musk (@elonmusk) June 3, 2022
政治の世界は一筋縄ではいかないものだ。(了)
出典元:Mashable:‘Lots of luck on his trip to the moon’: Biden rips Elon Musk on plan to cut Tesla jobs(6/3)
出典元:New York Post:It’s Joe Biden vs. Elon Musk in war of words over state of US economy(6/3)