なぜゾウは癌にかからないのか?最新の研究でその理由が明らかに


最新の遺伝子研究によりゾウが癌にかからない理由が解明され、話題となっている。

 

細胞が腫瘍へと変化するのを防ぐ働き

 

ゾウが癌にかからない理由を解き明かしたのは、米国ユタ州に位置するユタ大学の研究チーム。彼らはオープンアクセスジャーナルCell Report上で論文を発表した。

 

小児がん専門医で同大学で研究を行うJosh Schiffman氏は2015年、ゾウには癌発症の原因となる損傷したDNAを死滅させる能力を有するDNA「p53」のコピーが40もあることを発見。

 

人間がこのp53のコピーを1つしか有さないのに対し、ゾウにはそれが40倍も存在していることを明らかとさせ、一躍話題となった。

 

一方、今回の研究においては、Schiffman氏と同じくユタ大学の遺伝学者Christopher Gregg氏の研究チームが、ゾウの免疫細胞に放射線を当てて破壊するという実験を行った。

 

さらにどの遺伝子が活性化するか調べたところ、FANCL、VRK2、BCL11Aという3つの抵抗素子が細胞を腫瘍へと変化させるのを防いでいたことが判明したという。

 

癌は身体の成長と密接に結びついており、非常に高い身長を有する個体は癌を患いやすい傾向にあり、また腫瘍も細胞の制御不能な成長によって形成されるとか。

 

しかし巨大な体と人間よりはるかに多い細胞を有するゾウは癌を発症せず、その理由は遺伝学者のみならず生物学者の間でも長年謎とされてきた。

 

 

人間は様々な動物と共通のDNAを持つ

 

一方、このゾウの免疫細胞に備わる遺伝子は人間も有しているという。

 

しかし人間におけるこの遺伝子は、ゾウの免疫細胞においてみられるのと同様の働きは行わないようだ。

 

ただ研究チームは、この発見が人間の癌治療においても応用できるとみる。

 

人間は他の動物と同じ遺伝子コードを数多く有しており、研究チームはゾウを含む同じ遺伝子を共有する数多くの動物の遺伝子を追跡。

 

共通の遺伝子における配列を調べることで、人の病気と発達における洞察が行えるとしている。

 

Gregg氏は「哺乳類の中で唯一飛ぶことができるコウモリを研究した」という。

 

さらに「我々はコウモリが翼を発達させるために変化させたゲノムを人間にも発見した」とする。

 

一方、コウモリが翼を発達させるために変化させたゲノムは人間においては「スタール耳」と呼ばれる特徴的な形の耳を形成させることがあるとGregg氏は指摘。

 

また人間はリスの縞模様を形成させているのと同様のDNAをも有しており、これが突然変異によりヌーナン症候群と呼ばれる先天性疾患の原因となっているともしている。

 

ゾウにおける免疫細胞と同様に、人間と動物とは多くのDNAを共有するが、人間と動物では共通するDNAが同じように機能するとは限らない。

 

「我々は未知の領域に着目している」というGregg氏。

 

「このメソッドはゲノム研究における新たな道を切り開くと共に、同定、診断、そして病気の治療における新たなアプローチを見出す可能性を秘めている」

 

ゾウが癌にかからない理由が解明された今回の研究。この研究がさらに進み、人間が癌から解き放たれる時がいつの日か訪れるかもしれない。(了)

 

出典:New York Daily News:Elephants’ cancer-resistant gene discovered, and it’s also found in people (3/9)

出典:NBCNews.com:Why don’t elephants get cancer? New gene study aims to explain(3/6)

出典:AFPBB News:ゾウにがんが少ない理由を解明、米研究(2015/10/8)