通説より10万年も遡る?30万年前のホモ・サピエンスと思われる化石を発見
北アフリカのモロッコにある「Jebel Irhoud(ジュベル・イルード)」という遺跡での調査により、ホモ・サピエンスの起源が10万年も遡る可能性が出てきた。
●5体のホモ・サピエンスと思われる骨を発見
この調査を行ったのはドイツにあるMax Planck 進化人類研究所のJean-Jacques Hublin氏や、モロッコ国立考古文化財研究所のAbdelouahed Ben-Ncer氏などが率いる研究チーム。
この国際的な研究チームは2004年から「Jebel Irhoud」での発掘作業を続けており、科学誌「Nature」の6月8日号において、16個のホモ・サピエンスと思われる骨の発見について明らかにした。
その人骨は少なくとも5人のものと思われ、頭蓋骨や歯、長い骨が含まれており、同時に付近から石器や多くの動物の骨も見つかったとしている。
●人骨は約30万年前、動物の骨はさらに古い
実はこの「Jebel Irhoud」は1960年代から人骨が発掘されており、石器時代中期のものと思われる石器などの人工物も発見されてきたという。
しかしこれらの化石の地質学的な年代はこれまで明らかになっておらず、また従来からホモ・サピエンスは約20万年前に誕生したと考えられてきたそうだ。
ところが今回、発見された石器を熱ルミネッセンス年代測定法で調べた結果、それが約31万5000年前に焚き火のまわりで熱せられたものと推定された。
これにより遺跡で見つかった人骨は、これまでで最も古いホモ・サピエンスの化石よりも、10万年も遡る可能性が出てきた。
しかもこの結果を裏付けるように、付近で発見された齧歯類(ネズミなど)の骨も、約33万7000年から37万4000年前のものであることも示されたという。
●約470種類の動物の骨も見つかる
また今回発表された論文の1つの共同執筆者である、カリフォルニア大学デービス校のTeresa Steele氏は、さらに付近で発見された動物の骨をくわしく調査し、興味深い事実を突き止めている。
彼女はこの遺跡で発見された動物の骨のうち、472の種類を特定。しかも骨にはホモ・サピエンスが食べたと思われる切り刻んだ痕跡も発見できたそうだ。
その骨の中で最も多かった種類はガゼルで、他にもシカレイヨウやヌー、ゼブラ、バッファロー、ヤマアラシ、ウサギ、カメ、淡水の軟体動物、ヘビ、ダチョウの卵の殻も含まれていたという。
●人間の変化がこの時起きていた
しかも小さな獲物の割合は少なく、ヒョウやハイエナ、他の捕食者の骨も見受けられたが、ガゼルなどの骨に人間以外の動物がかじった痕跡は見当たらなかったとされている。
Steele氏はリリースの中で次のように述べている。
「それは本当に人間が狩猟を好んでいるように見えました。今回の発見は、石器時代中期が30万年以上も前に始まっていたことと、現代に通じる人間の生物学的または行動における重要な変化が、この時アフリカの多くの場所で起きていたという考えを支えるものです」
実はまだ、今回発見された化石をホモ・サピエンスと考えることに異論を唱える学者もおり、確定はしていないのだが、現生人類の途上にあった化石であることは間違いないようだ。(了)
出展元:UCDAVIS:Moroccan Fossils Show Human Ancestors’ Diet of Game(6/7)
参考文献:NationalGeographic:30万年前の人類化石は初期ホモ・サピエンスか(6/10)