世界で初めて、遺伝子編集されたブタの腎臓を使い、人間への移植に成功
アメリカで先日、遺伝子編集されたブタの腎臓移植が行われ、3月21日に手術の詳細が発表された。
末期腎臓病を患った男性に移植
この手術は今月初め、マサチューセッツ州にある「マサチューセッツ総合病院」で行われたという。
この病院の医師たちは、4時間に及ぶ手術で、ブタの腎臓の血管と尿管を、末期腎臓病を抱えていた男性、リチャード・スレイマンさん(62)のそれらに繋げたそうだ。
このブタの腎臓は遺伝子編集されており、それらを使った人への腎臓移植手術は、世界で初めてになるという。
患者のスレイマンさんは現在、順調に回復を続けているそうだ。
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— MassGeneral News (@MassGeneralNews) March 21, 2024
「大きな到達点」
「マサチューセッツ総合病院」によると、スレイマンさんは長年、2型糖尿病と高血圧を患っており、2018年12月に病院で死亡した人間のドナーから腎臓移植を受けるまで、長年透析を受けていたという。
しかし、約5年後に再び腎臓が悪くなり始め、スレイマンさんは2023年5月に透析を再開。彼の生活の質に影響を与えてきたそうだ。
「マサチューセッツ総合病院」は今回の手術について、臓器を必要とする患者に、より容易に利用できるようにすることを追求する上での「大きな到達点」だと述べている。
また外科チームのメンバーである河合達郎医師も、リリースで次のように述べている。
「この移植の成功は、数十年にわたる何千人もの科学者と医師の努力の集大成です。私たちはこの節目において、重要な役割を果たすことができて光栄です。私たちの希望は、この移植アプローチが腎不全に苦しむ世界中の何百万もの患者に、命綱を提供することです」
有害なブタの遺伝子を除去
この提供された腎臓は、ケンブリッジに拠点を置く製薬会社「eGenesis」により、CRISPR-Cas9 技術を使用して遺伝子編集されたブタのものとされている。
編集されたブタの腎臓は、人間との適合性を高め、拒絶反応を減らすために、有害なブタの遺伝子が除去され、特定の人間の遺伝子が追加されたという。
また科学者らはヒトへの感染リスクを減らすために、ブタで見つかったレトロウイルスを不活化したそうだ。
動物の臓器が人間の患者に移植されるのは、これが初めてではない。メリーランド大学は2022年、遺伝子組み換えのブタの心臓を、2人の末期患者に移植した。
しかしその後、1人の患者は心不全が原因で、もう1人は臓器拒絶反応の兆候が現れ始めた後に、亡くなったという。(了)
出典元:ABC News:Surgeons transplant world’s 1st genetically edited pig kidney into living human(3/21)