「ニューラルリンク」に問題が発生、脳に埋め込まれたチップの機能が低下
人間の脳にチップを埋め込む技術に取り組んでいる企業「ニューラルリンク」の試みが、予期せぬ挫折を経験したと言われている。
部分的にチップが外れる
起業家のイーロン・マスク氏が所有する「ニューラルリンク」は今年の2月、被験者のノーランド・アーボーさんの脳にチップを埋め込み、その後、彼が思考するだけでPCのカーソルを動かす様子を公開した。
しかし「ニューラルリンク」は5月8日、ブログの投稿において、チップの埋め込み後1カ月以内にデバイスの機能が低下し始めたと明らかにした。
投稿によれば、脳に接続する装置のスレッド(回線か?)の一部が縮み始め、部分的に外れ、送信データが減少したという。
ソフトウェアを修正して能力が回復
「ニューラルリンク」はこの原因について明らかにしていないが、脳に埋め込まれた装置のスレッドが縮んだことで、有効な電極の数が減少し、装置の1秒あたりのビット数が減少したという。
ビット数とは、装置がどの程度、タスクを実行できるかを示す尺度とされ、能力の速度と精度を示している。
「ニューラルリンク」はその後、複数のソフトウェアを修正して不具合を補い、その結果ビット数が急速かつ持続的に改善され、初期の能力を上回ったそうだ。
この能力の低下は、アーボーさんに危険を及ぼすものではなく、一時はチップの取り外しも検討されたが、彼は依然として思考するだけで、PCにおいてチェスのゲームを続けているという。
「ニューラルリンク」は昨年9月、障がいを負った人々が思考だけでコンピューターを操作できるようにする取り組みの一環として、臨床実験に人間を参加させる承認を得た。
そして同企業は、このような技術を使って、将来的にはロボットアームや車椅子などにも用途を広げたいと考えている。(了)
出典元:CBS:Neuralink brain-chip implant encounters issues in first human patient(5/9)
出典元:The Guardian:Neuralink’s first implant partly detached from patient’s brain(5/9)