凍結させた脳細胞、解凍後にも機能させることに成功
中国の科学者らにより、脳細胞の機能を維持したまま解凍させる試みが行われた。
脳細胞を化合物に浸して凍結
この研究を行ったのは、上海・復旦大学のZhicheng Shao氏が率いる研究チームだ。
通常、脳組織は冷凍と解凍のプロセスに耐えられず、この問題が医学研究の大きな妨げになってきたという。
そこで復旦大学の研究者らは、ヒト胚性幹細胞を使用し、脳の「オルガノイド(幹細胞から作られる小型の臓器の総称)」を作成し、それらを3週間かけて増殖させたという。
さらに平均直径4ミリメートルの「オルガノイド」を、さまざまな不凍液などの化合物の液体に入れ、液体窒素中で少なくとも24時間保存し、凍結させたそうだ。
その後、「オルガノイド」を解凍させ、2週間にわたって細胞死や神経突起の成長を調べた結果、脳細胞の機能が維持されていることが明らかになった。
最も優れた組み合わせの「MEDY」
研究者らは、「オルガノイド」を浸す、さまざまな化合物の組み合わせを実験。細胞死が最も少なく、増殖が最も多かった組み合わせは、メチルセルロース、エチレン・グリコール、DMSO、およびY27632と呼ばれる化合物の組み合わせだったという。
科学者たちはこの組み合わせを「MEDY」と名付け、28日から100日以上まで成長した脳細胞の「オルガノイド」を、「MEDY」に入れて凍結。その後、解凍したそうだ。
その結果、研究者らは、解凍した「オルガノイド」の外観、成長、機能が、一度も凍結されていない「オルガノイド」と非常に類似していることを発見。しかも「MEDY」の中で18カ月間も凍結された「オルガノイド」でも、機能が維持されていたという。
さらに研究者は、てんかんを患う生後9カ月の女児から、3ミリメートルの脳組織の立方体を採取。「MEDY」に入れてから凍結、解凍した結果、組織は凍結前の構造を維持し、解凍後、少なくとも2週間は実験室培養で活性を保ち続けたそうだ。
研究者らは、「MEDY」が細胞死をプログラムする経路を妨害しているのではないかと考えており、この成功により、研究室での脳の発達のより良い研究につながる可能性が指摘されている。(了)
出典元:New Scientist:Frozen human brain tissue can now be revived without damage(5/15)