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抗うつ薬による水質汚染が、グッピーに悪影響を及ぼしている

抗うつ薬による水質汚染が、グッピーに悪影響を及ぼしている
flickr_Mihnea Stanciu

世界中の水生生態系に広がっている医薬品の汚染物資により、淡水魚がどのような影響を受けているか、についての研究が行われた。

 

水路の漏れ出た抗うつ薬

 

この研究を行ったのは、オーストラリアのモナシュ大学と、イタリアのトゥシア大学の生物学者らだ。

 

彼らは人間の抗うつ薬を製造する過程で、水路に漏れ出た物質が、淡水魚、特にグッピーにどのような影響を及ぼすか、について調査したという。

 

研究者たちは、捕獲した野生のグッピーの子孫を、「プロザック」の商品名で販売されている抗うつ薬「フルオキセチン」に、さまざまな濃度で5年以上、15世代にわたって曝露させたそうだ。

 

その結果、グッピーの行動や生殖特性に変化がもたらされていると結論付けた。

 

精子形成にネガティブな影響

 

研究者らは、オスのグッピーの活動性や危険を冒す行動の他、体の状態や体色の特性、「精子の活力、数、速度」などの生殖特性を研究し、記録したという。

 

その結果、グッピーの生活や精子形成にネガティブな影響を及ぼしており、各個体間における通常の行動やリスクをとる行動(例えば交尾を巡って他のオスと競争するなど)の行動にも変容が見られたそうだ。

 

具体的には、例え低濃度であっても、雄の生殖器官が大きくなり、平均して泳ぐ量が少なく、隠れる頻度が増加。また生殖の成功に不可欠な要素である、精子の速度も低下していたという。

 

他の魚や野生動物にも影響の可能性

 

今回の研究論文の共著者であるトゥシア大学のGiovanni Polverino助教授によれば、この研究結果は、生態系の中に流入した「フルオキセチン」が、他の種にも同様の影響を与える可能性があることを示唆しているという。

 

実際、Polverino助教授の同僚は、さまざまな種類の魚、海洋動物、さらにはサケについても同様の研究を行っており、その影響は明らかに永続的で、蓄積され、野生動物や魚などに大きな影響を及ぼしているそうだ。

 

今回の研究では、グッピーの「行動を調整する能力」が汚染物質の存在によって崩壊したことも発見。そのため、グッピーは汚染物質にさらされても生き延びるが、気候変動や他の汚染物質、外来種などの他の環境変化に適応する可能性が低くなると考えられている。(了)

 

出典元:ABC News:Pollution from antidepressant production is altering fish behavior and reproductive traits, scientists say(8/31)

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