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台湾で発見された顎の骨、デニソワ人のものであると判明

台湾で発見された顎の骨、デニソワ人のものであると判明
総合研究博物館/海部陽介教授

台湾最古の人類化石の調査が行われ、「デニソワ人」の顎の骨であることが判明した。その詳細が東京大学総合研究博物館のサイトで紹介されているので、要約してみる。

 

台湾で発見された下顎骨化石を分析

 

この研究を行ったのは、日本や台湾、デンマークの国際共同研究チームだ。

 

そもそも「デニソワ人」とは、シベリアのデニソワ洞窟で化石が発見され、骨や歯の断片から抽出された古代ゲノムにより、2010年に存在が確認されたという。

 

ただ「デニソワ人」という名前は、ネアンデルタール人とは別系統の旧人集団に対する仮称(ニックネーム)とされている。

 

その化石は、これまでシベリアとチベットの2カ所の遺跡でしか発見されておらず、歯や指の骨などごく断片的なものがほとんどであるため、「デニソワ人」の姿や実際の分布域は謎に包まれているそうだ。

 

しかし今回、国際共同研究チームは、2015年に台湾の澎湖水道の海底から発見された原始的な人類(澎湖人)の下顎骨化石(澎湖1号)から、古代タンパク質を抽出することに成功。

 

遺伝情報を記録したその配列から、この化石がデニソワ人の男性に由来することが明らかになったという。またこの結果から、「デニソワ人」がアジア南東部にも生息していたことが確認された。

 

現代人にも「デニソワ人」の要素

 

下顎骨化石(澎湖1号)は今から19万年~1万年前のものと考えられ、同時代には地球上に「デニソワ人」と共に、「ネアンデルタール人」や、我々「ホモ・サピエンス」が存在していたという。

 

そしてアジア東部、特に南東部の「現代人」のゲノムにも、「デニソワ人」由来の要素があり、当地で「デニソワ人」と「ホモ・サピエンス」との間に、交雑があったと推測されていた。

 

しかし、「デニソワ人」の化石はこれまで、アジア北部のシベリアやチベットでしか見つかっていなかったため、それを検証することはできなかったそうだ。

 

そして2015年に、この下顎の化石が発見された当初は、「アジアで発見された第4の原人」とされ、古代DNAを抽出する試みも行われたが、おそらくDNAが分解され過ぎていたため、うまくいかなかったという。

 

ただ今回、コペンハーゲン大学の世界最高レベルの実験設備を用いることで、汚染の影響を取り除き、古代タンパク質を抽出することに成功。「デニソワ人」がアジア南東部にも生息していたことが、化石記録からも確認された。

 

古代人類化石も「デニソワ人」の可能性

 

実は日本列島に暮らす現代人のゲノムにも、わずかだが「デニソワ人」との交雑の痕跡が残っており、こうした事実は世界を驚かせたという。

 

また、これまで発見されたアジアの古代人類化石のいくつかは、「デニソワ人」である可能性が高いと考えられるが、それらの化石のDNAあるいはタンパク質の配列に記録された遺伝情報がわからないため、どの化石がデニソワ人のものなのかは、未だに不明となっている。

 

今回の研究では、4241残基のアミノ酸配列が得られ、その中に「デニソワ人」に特有とされる2カ所が確認されたため、下顎骨化石が既知の「デニソワ人」と同じグループに区分された。

 

またこの研究では、「ネアンデルタール人」や「ホモ・サピエンス」に比べて、「デニソワ人」の顎と歯がだいぶ頑丈で、ごつごつしていたことも明らかにされたそうだ。(了)

 

出典元:東京大学総合研究博物館: 台湾からデニソワ人(4/11)

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