NASAが高度80キロにある極中間圏雲の撮影に成功、青く波状に広がる雲が美しい
NASAにより北極圏に近い場所で、電気を帯びた珍しい青い雲の様子が撮影され、注目を集めている。
高度80kmにできる青い雲
NASAの動画によれば、その雲とは「夜光雲」または「極中間圏雲(Polar Mesospheric Clouds:PMCs)と呼ばれるもので、バルーンによるミッションで今回観測されたという。
このPMCsは黄昏時にしか目で見ることはできず、地球の極点地域の大気圏の高い場所(成層圏の約高度10kmから50kmより高い地点)で、夏の間に形成されるそうだ。
通常の雲は高くても高度20kmほどしかない。しかしPMCsは地上から50マイル(約80km)という成層圏と熱圏の間にある、中間圏界面で雲が形成され、氷の結晶から構成されており、太陽の光を反射させて明るい青色に、または白く光るとされている。
しかもこれらの現象は水蒸気や温度といった環境要因に対して極度に繊細に反応するという。
PMCsを通して確認できる大気重力波
そもそも山を越えてくる気流や雷を伴った嵐のような動きは、大気をかき乱し、非常に高い高度で広がっていく波を形作るそうだ。
この波は大気重力波として知られており、それらは目に見えないものの、PMCsを通してその動きが確認できるとか。
また大気重力波は乱気流を引き起こし、また大気中に混沌とした動きを生み出すため、天候や気候、さらには天気予報にも影響を与える。
しかし乱気流の正確な原因や効果については、まだよく理解されていないという。
巨大なバルーンを飛ばし撮影に成功
そこでこの複雑なプロセスをよりよく理解するため、2018年の7月8日に研究者らは調査用のバルーンを打ち上げ、PMCs内における大気重力波の観測を行った。
巨大なバルーンには乗組員はおらず、スウェーデンからカナダへと5日間かけて飛ばされ、高度50マイル(約80km)の上空を移動し続けたとか。
その際、バルーンに取り付けられているレーザー・レーダーが、PMCsの高度や大気の温度を測定。この温度が、PMCsの形や明るさに影響を与えるという。
そしてバルーンに取り付けられた高解像度のカメラが、600万枚の写真撮影に成功。これにより科学者は大気重力波によって引き起こされる、大きなあるいは小さな青いさざ波状の雲を確認することができたという。
動画では最後に、乱気流をよく理解することは、天気予報モデルをより良いものに改善する手助けになり、同時に地球の周りで起きているプロセスの理解につながると説明している。
さらにこのことは結果的に、宇宙空間にある衛星や他の施設にも影響を与えることになるそうだ。
ちなみに科学者の中には、この極中間圏雲を、温暖化の進行を先取りする「気候変動のカナリア」と呼ぶものもいるという。(了)