絶滅した人類デニソワ人がネアンデルタール人と同時期に生活か、現生人類との関わりは?
絶滅した太古の人類種とされる“デニソワ人”が、シベリアの洞窟でネアンデルタール人と同時期に暮らしていた可能性が最新の研究で明らかとなり、注目を集めている。
20万年前から5万年前にかけ洞窟で暮らしたデニソワ人
今回の研究を率いたのは、オーストラリアのウーロンゴン大学の地質年代学者らによる研究チーム。
研究では絶滅した太古の化石人類であるネアンデルタール人とデニソワ人が、“デニソワ洞窟”と呼ばれるロシア・アルタイ地方の洞窟内で、ほぼ同じ時期に存在していたことが示されたという。
この調査においては、太陽光に曝されていた年代を特定する際に用いられる“光学年代測定(Optical Dating)”という手法により、堆積物を解析。
その結果、デニソワ人が少なくとも20万年から5万年未満ほど前に、洞窟内で暮らしていたことが明らかとなった。
そもそもデニソワ人とは?
デニソワ人とは、1980年にデニソワ洞窟で初めて、その骨の一部と3本の歯が発見された人類だ。
研究を率いたウーロンゴン大学の地質年代学者、Richard Roberts氏によると「デニソワ人はネアンデルタール人と姉妹群であり、つまり共通の祖先という観点からすると、彼らは現生人類よりもネアンデルタール人により近い」とのこと。
ただデニソワ人の身体的特徴については、発見された歯が非常に大きなものであったということ以外、Roberts氏いわく“ほとんど何もわかっていない”という。
どれほどの間、共に暮らしていたのか
一方、デニソワ洞窟においては、ネアンデルタール人も一時居住していたことが他の研究によって明らかとなっている。
これについてRoberts氏は、ネアンデルタール人は少なくとも19万年前から9万年前にかけてデニソワ洞窟に居住していたことが考えられるという。
他方のデニソワ人に関してRoberts氏は、「デニソワ人は30万年前には(デニソワ洞窟に)到達していた可能性があるが、30万年前のものと結びつく遺物の化石やDNAを何ら得られていない」とする。
そのため「洞窟内の堆積物からのさらなる化石やDNAの発見は、デニソワ人とネアンデルタール人がその地に暮らした時間範囲をより長いものであったと示す可能性もある」としている。
ネアンデルタール人と交配していたデニソワ人
しかしデニソワ洞窟における発見は、1980年の歯と骨だけではない。
昨年には、デニソワ洞窟内で少女のものとみられる骨の一部を発見。
Bone fragment belongs to a girl with Denisovan dad, Neanderthal mom https://t.co/wt3pUxEpqO pic.twitter.com/Pl7E9anVfe
— Don Wonder (@DonWonder98) August 22, 2018
さらに興味深いことに少女の父親はデニソワ人、母親はネアンデルタール人であることが判明しており、両種において交配が行われていたことが明らかとなったのだ。
Roberts氏は「デニソワ洞窟内の冷たく乾いた環境により、デニソワ人のDNAは顕著なまでに良好に保存されており、そのためデニソワ人のゲノムについては多くのことが明らかとなっている」としている。
デニソワ人は現生人類とも交配していた?
それだけではない。
研究者の間では、現生人類の一部がネアンデルタール人とデニソワ人のDNAをゲノムの中に有していることが知られており、そのため現生人類もデニソワ人とネアンデルタール人の間で交配を行っていたと考えられているというのだ。
しかし奇妙なことに、デニソワ人やネアンデルタール人のDNAを有する人々が居住するのは、いずれもシベリアから遠く離れた地であるとのこと。
これについてRoberts氏は「最早困惑するほどだが、デニソワ人のDNAを持つ人々は南シベリアから4970マイル(約8000キロメートル)も離れた地に暮らすオーストラリアの先住民アボリジニと、ニューギニアに非常に多く見つかっている」という。
Up to four percent of Melanesian DNA comes from the extinct Denisovan species https://t.co/6H72aOQApS pic.twitter.com/piSelOYTyh
— Archaeology Magazine (@archaeologymag) March 19, 2016
Roberts氏はこのようなことが起きた理由として、現生人類がアフリカの地を離れ南アジアや東南アジアに移動を行った際に、デニソワ人と現生人類との交配が行わたことにより、アボリジニやニューギニアの人々にデニソワ人のDNAが残されているのでは、と指摘する。
ただ、どこでどのようなタイミングで、このようなことが起きたのかということは未だ謎に包まれているとのこと。
「確かに現生人類は5万年前までにアジアの他の地域に現れていたが、デニソワ洞窟から最も近くで発見された現生人類の化石は、620マイル(約1000キロ)ほど離れたシベリア平原のウスチ・イシムと呼ばれる地で見つかったものだ」というRoberts氏。
「そのため現生人類がデニソワ人にデニソワ洞窟で出会い、そこでDNAを獲得したのかどうか、あるいはオーストラリアのアボリジニやニューギニア人の祖先にあたるデニソワ人が南アジアや東南アジアにいたのかどうかはわからない」
今回の研究により、ネアンデルタール人と共に暮らした時期が明らかとなったデニソワ人。彼らと現生人類の関わりは、まだまだ謎に包まれたままだ。(了)
出典:Fox News:Extinct human species lived together in Siberian cave, new research Shows(2/16)