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240年生きることが可能に?研究によりコウモリの長寿の秘密が明らかに

240年生きることが可能に?研究によりコウモリの長寿の秘密が明らかに
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健康的に美しく長寿を全うすることが可能となる方法があると言われれば、誰もが試してみたいと思うのではないだろうか。

 

そんな鍵をコウモリが握るかもしれないとする研究が発表され、注目を集めている。

 

同様の大きさの哺乳類の4倍も生きるコウモリ

 

この研究を発表したのは米国メリーランド大学の研究者ら。その論文は科学ジャーナル「Biology Letters」に掲載された。

 

研究では、コウモリ種のDNAによって再構成され、生物同士の類縁関係と進化の道筋を現した“系統樹”と呼ばれるものを分析。

 

するとその中の4血統、具体的にはキクガシラコウモリ、ウサギコウモリ、ナミチスイコウモリ、さらに少なくとも1血統のホオヒゲコウモリは、同じような大きさの哺乳類と比較し、少なくとも約4倍の非常に長い寿命を持つことが判明したという。

 

さらに研究においては、生物の一生にわたる変化を示した“生活史”と呼ばれるものの中で、生息域が高緯度にあること、そして雌雄における身体の大きさの違いはコウモリの寿命の長さに関わる可能性のあることが発見されたという。

 

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コウモリの長寿の秘訣は冬眠?

 

しかし生息域が高緯度にあること、そしてオスがメスよりも大きな身体を持つということがコウモリの寿命の長さに関わるとは、具体的にはどういうことなのだろうか。

 

研究によると、より高緯度に生息し冬眠を行うコウモリにおいては、赤道により近い地域に生息するコウモリよりも長く生きることが出来るとのこと。

 

研究報告の執筆者の一人であるGerald Wilkinson氏は、生息域の緯度が長寿にどのように影響を与えているのかについて、確かなことは明らかになっていないとしている。

 

一方で、高緯度に生息するコウモリに、体温を変化させる能力が備わっていることが関係している可能性があるとも述べている。

 

高緯度に生息するコウモリは冬眠を行うが、冬眠期間中には体温が著しく低下する一方、活動期においては再び体温が上昇する。

 

Wilkinson氏によると、今回発見された4血統の長寿であるコウモリにおいて、3血統は冬眠を行うものであるという。

 

体温の変化に対する耐性が長寿の秘訣?

 

一方、その中で例外的なのはナミチスイコウモリだ。

 

しかしWilkinson氏によると、「ナミチスイコウモリは哺乳類の中では非常に珍しく、一日を通して体温の上げ下げを行うことが可能」とのことで、やはり他の3血統同様に体温を変化させる能力を有しているとのことだ。

 

体温を変化させることで、ナミチスイコウモリは餌となる血を摂取することが出来なかった場合であっても、エネルギーを温存することが出来るという。

 

これまでにも科学者の間では、一定の哺乳類における体温の変化に耐える能力は、この能力を有さない場合と比較し、感染症に対してより高い抵抗能力を有することができる可能性があるとされてきた。

 

またこのような能力は人間においても限定的に備わっており、免疫系がウィルスやバクテリアを殺そうと試みる際、体温を上げ発熱を引き起こすのはその一例だ。

 

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雌雄における身体の大きさの違いも寿命の長さに関わる

 

他方でコウモリの寿命の長さに関わりを持つと考えられるもう一つの要因は、オスとメスの身体の大きさの違いだ。

 

今回の研究においては、オスがメスよりも大きな身体を持つ種においては、オスがメスと同程度の大きさ、あるいはオスがメスよりも小さな種と比較して、寿命が短いことも判明している。

 

大多数のコウモリ種においてはメスがオスよりも大きな身体を持つが、熱帯地域に生息する種においてはオスがメスよりも大きな身体を持つ。

 

そして熱帯地域の種においては、メスを獲得するためのオス同士の競争が攻撃性を高め、結果的にオスの身体が大きくなるという進化をもたらした可能性があるとのこと。

 

しかしWilkinson氏によると、オスにおける身体の大きさの変化はメスを獲得するための競争においては有利となり得た一方、メスの獲得競争は死亡率の増加にもつながった可能性があるという。

 

さらに身体的に優位となる特徴は寿命を引き延ばすことよりも重要となり得るため、このような攻撃性ゆえの死亡率の高さは、長い時間をかけ種そのものの寿命をも縮めてしまったかもしれないとのことだ。

 

人間も長寿である一方、それを上回る長寿の持ち主であるコウモリ

 

寿命の長さは身体の大きさに関わっていることが多く、大きな身体を持つ動物種は小さな身体を持つものと比較して長生きすることが一般的だ。

 

例えばアフリカゾウは70年ほど生きるのに対し、ネズミは1年から3年ほどしか生きられない。

 

それに対して人間は身体の大きさという観点からすれば、同様の大きさの身体を持つ哺乳類と比較して4倍ほども生きることが出来、比較的長寿であると言える。

 

しかしコウモリは身体の大きさという観点からすると、人間を上回る長寿の持ち主とされ、その中には同様の大きさの身体を持つ哺乳類と比較しても、8倍ほども長い40年という寿命を生きる種も存在するとのこと。

 

そのためコウモリは、科学者の間では長寿の秘訣を理解するための鍵を握ると考えられてきた。

 

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今回の研究結果についてWilkinson氏は、「科学者らは密接に関わる種において、どの種が長く生き、どの種が短命であるのかということを示す発見に強い関心を示している。なぜならこれは一定の種に長く生きることを可能とさせた、近年における変化があることが示唆されているからだ」という。

 

「この研究は密接に関わる種において異なる寿命を持つ複数のケースを示しており、多くの比較と一定の種に、長く生きることを可能とさせる潜在的なメカニズムを探す機会を与えてくれている」

 

ちなみにWilkinson氏によると、もし人間がコウモリと同程度に生きられるならば、身体の大きさから考慮して約240年も生きることが出来るとのこと。

 

長生きを誇るコウモリの研究がより進み、いつの日か人類が彼らのように健康的で、より長寿を全うできる日が訪れることを願うばかりだ。(了)

 

 

出典:Phys.Org:Long-lived bats could hold secrets to mammal longevity(4/10)

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